もう一つの死海文書「シャピラスクロール」の謎! 発見者が自殺に追い込まれ… 何が書かれていたのか!?

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画像は「Wikipedia」より

 歴史的に貴重な骨董品の何割かは偽造品であるともいわれているが、かつて偽造品であると疑われ、所有者の命まで奪った宗教的古文書がある。古代ユダヤ教の実像が記された「死海文書」の発見(1947年)よりも半世紀以上前に出土した、“もう一つの死海文書”こと「シャピラスクロール」だ。

■知られざる“もう一つの死海文書”とは?

 1883年、エルサレムで古物商を営んでいたモーゼス・ウィルヘルム・シャピラは、死海の近くでバラバラになった15枚もの羊皮紙の断片に記された古文書を発見したと主張した。

 ヘブライ語で書かれたこの古文書をシャピラが何年もかけて解読した結果、旧約聖書のモーセ五書のうちの「申命記」の一部であり、なんと「モーゼの十戒」に追加される11番目の戒めとなる「あなたはあなたの心の中の兄弟を憎んではならない。わたしは神であり、あなたの神である」という文言が含まれているというのである。

 シャピラによれば、この古文書は第一神殿の時代のものであると共にバビロン捕囚より前のものであり、聖書の最も古いテキストうちの1つであるという。

 この古文書は、元が巻物であったと推測されることから「シャピラの巻物」という意味の「シャピラスクロール」と呼ばれるようになり、キリスト教史を揺るがす世紀の発見としてヨーロッパ中でセンセーションを巻き起こした。

 シャピラはこの発見を確かなものとするために、何人かのドイツの学者や専門家に巻物のコピーを送ったが、専門家の誰もが即座に「シャピラスクロールは偽造されたものである」との結論を下した。

 特に、タルムード(ユダヤの教義)とラビ(ユダヤの教指導者)の文学に関してドイツ最大の権威であった神学者でオリエンタリストのヘルマン・レベレヒト・ストラックは、彼を完全な贋作師であると非難した。ベルリンの王立図書館は、この偽造がどのように行われたかを研究できるように、シャピラスクロールを二束三文で購入することさえ検討したという。

 多くの学者から反射的に偽書であると判断された背景には、実は偽造品の売人として悪名を轟かせたシャピラの過去があった。

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モーゼス・ウィルヘルム・シャピラ 画像は「Wikipedia」より

 シャピラは過去、ロンドンで偽の「サムソン(古代イスラエルの士師の一人)の棺」を売ろうとしたが、墓碑銘の名前のつづりが「サンプソン」になっていることが指摘されて偽造品であることが発覚。また、ベルリンの美術館に1700もの偽の置物を販売して大金を稼いだともいわれている。

 そんなシャピラではあるが、シャピラスクロールには相当な思い入れと自信を抱いていたらしく、大英博物館に百万ポンドで売ろうと考えて15枚の紙片のうち2枚を同博物館で展示した。それを見ようと何千人ものロンドン市民が集まったと伝えられる。

 ところが見物客の中には専門家もおり、著名な聖書学者のクリスチャン・デイヴィッド・ギンズバーグもこれが偽物であると断言した。屈辱にまみれたシャピラは、ギンズバーグに不平を訴える手紙まで送りつけている。

「あなたは、私が間違っていると公表することによって私を虚仮にしました。この恥辱を乗り切ることができるとは思いません」(手紙より)

■「シャピラスクロール」再検証の議論

 世間に顔向けできなくなったシャピラは、ロンドンからアムステルダムへ逃れた。しかし、それでもなおシャピラは大英博物館の主任司書であるエドワード・オーガスタス・ボンドとギンバーグに彼らの見解を考え直すよう懇願し、シャピラスクロールが本物であると主張し続けた。

 だが、専門家の結論は覆ることはなく、それに耐えきれなかったのかシャピラは1884年に拳銃自殺をするという悲惨な結末を迎えることになる。そして1889年に大英博物館は2枚のシャピラスクロールの展示を止め、タダ同然で売り払ったということだ。

 現在、全部で15枚あるはずのシャピラスクロールの行方はよくわかっておらず、保管場所で起きた火災で大部分が焼失したという話もある。

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画像はUnsplashTaylor Floweより

 だが、現代になってこの話は急展開を見せる。意外にもシャピラスクロールが本物であったという可能性が高まり、再検証すべきとの議論が巻き起こっているのだ。

 独ポツダム大学のイスラエル系アメリカ人学者であるイダン・ダーショウィッツ氏が、ベルリン州立図書館でシャピラの論文を精査したところ、「彼の発見が本物であることが示されており、偽造品であると断定されたのは『シャピラと聖書研究の両方にとっての悲劇』であった」と言及している。

 また米ニューヨーク・タイムズ紙の記者であるジェニファー・シュースラー氏もまた、発見者がシャピラでなかったとしたら、この古文書の扱いは違っていたのではないかという見解を示している。

 このように、人類史の宝と考えられる古文書が見つかったが、発見者が詐欺師であるが故に偽物と断定され、それらが失われたどころか発見者まで命を絶つという事件が起きているのだ。「もう一つの死海文書」ことシャピラスクロールは今、どこかに存在しているのだろうか。貴重な人類の遺産に新たな光が当たる日が再びやってくることを願わずにはいられない。

参考:「Mysterious Universe」、ほか

 

※当記事は2022年の記事を再編集して掲載しています。

TOCANA編集部

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