気候変動時代の“救世主”になる?真水ゼロの孤島で200年以上繁栄したヤギの謎

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 ブラジル北東部の沖合約70kmに浮かぶアブロルホス諸島。その中の一つ、サンタ・バルバラ島で、科学者たちが首をかしげる不可解な現象が起きていた。なんと、ヤギの群れが2世紀以上にわたり、明確な真水の水源がないにも関わらず生き延び、さらには繁殖までしてきたというのだ。一体どうやって彼らは過酷な環境を生き抜いてきたのだろうか?

植民時代の置き土産? 謎多きヤギの起源

 このヤギたちが、いつ、どのようにしてサンタ・バルバラ島にやって来たのか、正確な経緯は分かっていない。しかし、科学者たちは、植民地時代に入植者たちによって持ち込まれ、その後置き去りにされた家畜の末裔ではないかと考えている。ヤギや豚、鶏といった家畜は、当時の入植者にとって信頼できる食料源だったが、植民が失敗に終わるとしばしば島に残されたのだ。サンタ・バルバラ島におけるヤギの存在は、記録によれば250年以上前から確認されている。驚くべきは、この小さな火山島には知られている限り真水の水源が存在しないという点だ。

 この「不都合な真実」にもかかわらず、ヤギたちは乾燥し風の強い島でたくましく生き延び、数を増やしていった。しかし、その繁殖力ゆえに、島の固有の動植物、特にこの地域で繁殖する7種の海鳥の生態系を脅かす存在となってしまった。

生態系保護と科学的価値、ヤギ移送の決断

 この状況を受け、アブロルホス国立海洋公園を管理するチコ・メンデス生物多様性保全研究所(ICMBio)は、先月、島に残っていた最後のヤギ27頭を移送する作業を実施した。ヤギの存在が島の生態系のバランスを損なっていると結論づけられたためだ。しかし、彼らはヤギを根絶やしにするのではなく、別の場所へ移送し保護することを選んだ。なぜなら、科学者たちは、彼らが持つ驚異的な生存能力、特にほとんど、あるいは全く水なしで生き延びる能力を研究したいと考えているからだ。

「彼らは生き残るために、独自の才能を発達させたと信じています」と、アブロルホス国立海洋公園の責任者であるエリスマー・ロシャ氏は語る。「もし彼らの個体数が管理されていなければ、島全体を乗っ取り、自滅していたでしょう」。


水分補給のミステリーと未来への期待

 特筆すべきは、科学者たちが長年サンタ・バルバラ島の謎めいたヤギたちを研究してきた中で、彼らが水を飲んでいる姿を一度も目撃したことがないという点だ。「では、どうやって2世紀以上も生き延びてきたのか?」という大きな疑問が残る。現時点では専門家も推測するしかない。

 一つの可能性として、ヤギが海水を飲むことに適応し、その習性が世代から世代へと受け継がれたのではないかという説がある。また別の説では、島で見られる水分含有量の高い植物「ベルドロエガ」(スベリヒユ科の植物の一種とされる)が、彼らの生存を支えていたのではないかと考えられている。

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画像は「Oddity Central」より

 しかし、サンタ・バルバラ島のヤギたちは、ただ生き延びていただけではなかった。彼らは明らかに「繁栄」していたのだ。研究者たちは、島での出産の多くが双子であったことを報告しており、これはヤギたちが「栄養状態が良く、健康であった」ことを示唆している。

 ブラジルの科学者たちは、サンタ・バルバラ島のヤギを研究することで、その極限的な回復力の秘密を解き明かしたいと考えている。その知見は、気候変動の課題に立ち向かい、ブラジル北東部のような乾燥地域で生き残るのに適した、新しい家畜品種の開発に役立つ可能性があるのだ。真水なき孤島で育まれた驚異の生命力は、未来の食糧問題や環境適応へのヒントを与えてくれるかもしれない。

参考:Oddity Central、ほか

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