オーパーツ「アンティキティラ島の機械」は天体コンピューターではなかった!? 最新研究が示す“アート系オブジェ説”の衝撃

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画像:Marsyas氏による撮影(CC BY 2.5|出典リンク

 2000年前の謎の装置「アンティキティラ島の機械」は古代の驚異的技術の片鱗ではなく、アート系のオブジェだったのか――。

■「アンティキティラ島の機械」はアート系オブジェ?

 1901年に地中海・アンティキティラ島近海の沈没船から発見された「アンティキティラ島の機械」は謎に包まれていたが、数年前に行われたCTスキャンによる分析の結果、この2000年前の装置が天文学的な道具であった可能性が示唆されることになった。

「アンティキティラ島の機械」は手回しクランク、多数の連動歯車、そしてさまざまな表示器で構成されており、エジプト暦とギリシャ暦に基づいた日付の表示、黄道帯における太陽、月、惑星の位置の表示、そして将来の月食や日食の予測など、さまざまな機能を備えていたと考えらえている。

 魅力的な装置ではあるが、本当に天体測定を目的としていたのだろうか。高性能なコンピューターとして、それとも単なる工芸品として作られたのか。また裕福なパトロンのために作られたアート系のオブジェだったのか。それとも大量生産されたツールの一例に過ぎなかったのか。

 研究者たちは何十年にもわたり、「アンティキティラ島の機械」の本来の目的を解明するために、この機構の精度を分析してきた。精度がそれほど高くなかったとしたら、ひょっとすると玩具や教育用模型だったかもしれず、逆にきわめて精密だったとしたら、宮廷占星術師が予言や星占いを行うために使われていたかもしれない。

 残念ながら「アンティキティラ島の機械」は2000年以上も海の底に埋もれており、それ以前に稼働していた期間も不明で、歯車はひどく腐食し、多くの部品が失われている。

 アルゼンチンのナシオナル・デ・マール・デル・プラタ大学の研究チームは「アンティキティラ島の機械」の動きを再現するコンピューターシミュレーションを作成し、そのシミュレーション結果を示す研究論文を今年4月1日に査読前研究論文サーバー「arXiv」に投稿した。

 シミュレーションでは、歯車の間隔が正確ではないなど、製造上の不正確さに起因する誤差が明らかになっている。

 重要なのは、機構を再現するこれまでの取り組みとは異なり、研究者らが機構の三角形の歯車の歯の正確なモデルも組み込んだことで、この歯は歯車が互いにどれだけうまく噛み合うか、また指示器が意図した天体目標をどれだけ正確に指し示すかが検証された。

 このモデルから、研究者たちはこの機構が実は全く役に立たないことを突き止めた。カレンダーとしての日付表示が1年分あるにもかかわらず、実際には4カ月先までしか回せなかったのだ。それ以上回すと歯車が詰まるか、あるいは歯車が外れてしまうのだ。そうなると、ユーザーは再び動かすために全てをリセットする必要がある。

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2007年の再現版の前面パネル By I, Mogi, CC BY 2.5, Link

 一つの可能​​性としては「アンティキティラ島の機械」は、完全な正確さを意図していないオブジェだったか、または、時々手動でゼンマイを調整しなければならない機械式時計のように、数回回したらリセットする必要がある酷く面倒で趣味的なアナログ機器であったことが挙げられてくる。

 しかしこれほど複雑な装置の製作に注ぎ込まれた職人技の作業量を考えると、研究チームは「アンティキティラ島の機械」が単なる不完全なオブジェだったとは考え難いという。

 研究チームが考えるもう一つの説明は、歯車と歯の現在の測定値が誤っている点から、2000年にわたる腐食によって部品は元の状態をはるかに超えて歪んでいる可能性だ。

 この機構のオリジナルの製作者は、機械の詰まりを防ぎ、将来何年にもわたる信頼性の高い予測を提供できるほどの精度を実現していた可能性がある。つまりそもそも現在の分析技術では当時の精度を確認できないというのだ。

 いずれにせよ「アンティキティラ島の機械」は古代の工学技術の集大成のように見えるのだが、その目的についての謎はむしろ深まったのかもしれない。

参考:「Live Science」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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