ザッカーバーグ氏が描く「AIが親友になる未来」は人類の“救済”か、それとも孤独なディストピアへの序章か

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

「友達、足りてますか?」――Meta社のCEO、マーク・ザッカーバーグ氏が、そんな問いを投げかけた。しかし、彼が提案する解決策は、もっと人と交流しよう、というものではない。なんと、「もっとロボット(AI)と話そう」というのだ。この発言は、テクノロジー企業Stripeが主催したカンファレンスでのこと。聴衆は彼の描くあまりにもSF的な、あるいはディストピア的な未来像に、言葉を失ったに違いない。

 ザッカーバーグ氏は、人々が友達やセラピスト、さらには恋人までもAIに求める方が良いかもしれない、と示唆した。その根拠の一つとして彼が挙げたのは、2021年の調査結果。平均的なアメリカ人の友達の数は3人未満だというのだ。彼は人々がデジタルの殻に閉じこもるのをやめさせる代わりに、AIこそが孤独な人間の好みや嗜好を、生身の人間よりもよく理解できると主張。

「人々は、自分のことをよく知っていて、まるでフィードのアルゴリズムのように自分を理解してくれるシステムを欲しがるようになると思う」と述べ、「セラピストがいない人にとっては、誰もがAIを持つようになるだろう」と予測した。さらに、平均的な人間は約15人の友人を欲しており、それ以上親しい関係を持つことは手に余ると考えている、とも付け加えた。

「孤独を生んだ張本人が解決策を?」元幹部や世論から猛反発

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Anthony Quintano from Westminster, United States – Mark Zuckerberg F8 2019 Keynote, CC 表示 2.0, リンクによる

 Metaのトップが描く「デジタルな友情」の未来像に対し、ソーシャルメディア上では無数の人々から、そして他のIT業界の幹部からも、即座に反発の声が上がった。

 元Instagram幹部のメグハナ・ダール氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、AIこそが孤独感をパンデミックレベルにまで押し上げた一因だと鋭く指摘。「私たちの社会的孤立や、慢性的なオンライン状態を引き起こしたまさにそのプラットフォームが、今度は孤独という伝染病の解決策を提示している。まるで放火犯が消防士として戻ってきたかのようだ」と皮肉った。

 彼女の指摘を裏付けるかのように、2024年のアメリカ精神医学会の調査では、アメリカ人の3人に1人が週に一度は孤独を感じていることが明らかになっている。これまでの研究でも、人々がモバイルデバイスに費やす時間が増え、対面での接触が減ったことが、社会的孤立の問題と関連付けられてきた。

 一般の人々の反応も芳しくない。「この話の全てが嫌いだ」「マーク・ザッカーバーグは、人々が人生に本当の友達を必要としないと考えている金持ちの変人だ。AIと友達になればいいとでも?」「マーク・ザッカーバーグのこの引用は悲しく、恐ろしい。友達をAIに置き換えるな。ディストピア的なゴミだ」といった辛辣なコメントがX(旧Twitter)に溢れた。

それでもAIとの関係を求める人々 「AI恋人市場」の拡大

 しかし、ザッカーバーグ氏は、テクノロジーの革新において常に時代を先取りすることで巨万の富を築いてきた人物だ。20年前にFacebookでソーシャルメディアの世界に躍り出て以来、InstagramやWhatsAppを買収し、その影響力を拡大してきた。

 そして、AIロボットやチャットボットでサポートネットワークを構築するという彼のアイデアは、驚くべきことに、信奉者を増やしつつあるのも事実だ。中には、知的な機械を使って恋愛生活を向上させようとする人々もいる。今年2月には、アキと名付けたセクサロイド(性的な機能を持つロボット)と交際していると主張する男性が、その親密な関係の詳細を語り、まるでSF映画が現実になったようだと述べている。彼は「固定観念とは裏腹に、特に境界線を設定することに関して、私は社交的な場面でより有能になった」とさえ語っている。

 2023年には、「AI恋人」市場の評価額は約29億ドルに達し、多くの男女がこれらの人工的な伴侶に夢中になっているという。2023年に仕事や私生活でAIを利用したと答えた女性は35%だったのに対し、男性ではその数字が54%に上った。ザッカーバーグ氏が友情の未来を予測しようとしているように、2016年のある研究では、2025年までに女性は人間よりもロボットと多くのセックスをするようになるだろうと予測されていた。

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

AIセラピストは是か非か? 専門家の意見も分かれる

 より専門的な用途については、少なくとも一人の専門家が、AIが人間の個人的なセラピストになるべきだというMeta社CEOの考えを支持している。カリフォルニア大学アーバイン校の心理科学教授スティーブン・シューラー氏は、セラピーは価格や医療保険の適用範囲の問題で、多くの人々にとって手の届かないものであることが多いと説明する。「ほとんどの人はセラピストにアクセスできない。だから彼らにとっては、チャットボットかセラピストか、ではなく、チャットボットか何もないか、なのだ」と。

 ザッカーバーグ氏の提案は、テクノロジーが人間の根源的な欲求や社会のあり方にどこまで踏み込むのか、そしてそれがもたらす未来はユートピアなのか、それともディストピアなのか、改めて私たちに重い問いを突きつけているのかもしれない。

 AIが友達になる日は、本当に来るのだろうか。そして、それは私たちにとって幸せなことなのだろうか。

参考:Daily Mail Online、ほか

TOCANA編集部

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