悪魔と契約し一夜で完成? “悪魔の聖書”「ギガス写本」の不気味な伝説

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中世期最大の写本『ギガス写本』 Michal Maňas投稿者自身による著作物, CC 表示 2.5, リンクによる

 古代の謎めいた写本、それも悪魔的な伝説がほんのり香る物語がお好きなら、この「ギガス写本(Codex Gigas)」、またの名を「悪魔の聖書」はまさにうってつけの一冊だろう。

 伝説の舞台は13世紀のボヘミア(現在のチェコ共和国)。ある修道士ヘルマンが、修道院の厳しい戒律を破り、恐ろしい罰を宣告される。その罰とは「壁の中に塗り込められ、生きたままゆっくりと死を待つ」という、あまりにも残酷なものだった。

 死の運命を前にしたヘルマンは、修道院長に驚くべき取引を持ちかける。もし、夜が明けるまでに人類のあらゆる知識を網羅した本をたった一人で完成させられたなら命を助けてほしい、と。途方もない要求だが、彼は悪魔に自らの魂を売り渡し、その力を借りるという禁断の契約を結ぶ。そして翌朝、彼は見事に一冊の本を完成させ、その中には「協力者」である悪魔への敬意(?)を示すかのように、悪魔自身の肖像画まで描かれていたという。

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中に掲載されている悪魔の絵 Herman the Recluse, Codex Gigas(パブリックドメイン) Image: Kungliga biblioteket

聖書から悪魔祓いまで。620ページに及ぶ驚異の内容

 もちろん、これはあくまで伝説だ。しかし、このギガス写本が謎めいた興味深い書物であることは紛れもない事実である。

 全620ページにも及ぶこの巨大な写本には、旧約聖書と新約聖書はもちろんのこと、中世の医学教科書『アルス・メディキナエ(Ars medicinae)』、歴史年代記、プラハのコスマスの著作、そして極めつけに「悪魔祓い」の方法まで、多岐にわたる情報が詰め込まれている。

一夜どころか30年?専門家が分析する制作の舞台裏

 専門家による筆跡鑑定では、この膨大な写本は、驚くべきことに一人の人物によって書かれた可能性が高いとされている。しかし、当然ながら一夜で完成するような代物ではない。

 スウェーデン国立図書館の分析によれば、仮に筆記者が1日に6時間、週に6日作業したとしても、完成には約5年かかる。もし彼が修道士であり、1日に3時間しか作業できなかったとすれば、ゆうに10年。さらに、文字を書くための下線を引く作業や装飾も考慮に入れると、完成には少なくとも20年、長ければ30年を要したと推定されている。一夜の伝説とは、あまりにもかけ離れた途方もない労力だ。

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全体が豪華に装飾されている Benedictine Monastery of Podlažice(パブリックドメイン) via Wikimedia Commons

作者は「隠者ヘルマン」か、それとも…?残された最大の謎

 では、一体誰がこの驚異的な写本を書き上げたのか。写本には「hermann inclusus(隠者ヘルマン)」という署名があり、これが伝説の修道士の名前と結びつけられている。しかし、ここにも大きな謎が残る。

 この写本が最初に所有されていたポドラジツェ修道院は、あまりにも小さく貧しい修道院で、このような壮大な書物を制作できる環境や財力があったとは到底考えられないのだ。

 結局のところ、本当の作者は誰なのか。新たな発見があるか、あるいは伝説通り悪魔本人が名乗り出てこない限り、「悪魔の聖書」の作者は、歴史の闇に包まれたままなのかもしれない。

参考:IFLScience、ほか

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