まだ解読されていない謎の古代文字&古文書トップ10【後編】

 古代史研究の進展を阻む未だ解読の糸口すらつかめていない謎の文書の数々――前編に続き後編でも難攻不落の5つの文書を解説する。

前編】はこちら

■インダス文字

 古代インダス文明に関連する「インダス文字(Indus Script)」は、古代の印鑑、石板、陶器などに見られる4000年以上前に遡る未解読の文字体系として残されている。約400の異なる記号で構成されるこの文字は、発見以来学者たちを困惑させてきた。これらの文字は、現在のインドとパキスタン全域の工芸品に刻まれており、世界最古の文字形式の1つである。

画像は「Wikimedia Commons」より

 記述の目的とそれが表す言語は依然として解明されておらず、この文字が宗教的または行政的な情報を伝えているのではないかとの仮説もあるが、表語文字または音節体系を表しているのではないかと示唆する者もいる。

 統計的、計算的、および比較言語学的アプローチを駆使した数十年の研究でも決定的な進歩をもたらすことができていない。インダス文字をめぐる謎は依然として残り、学者たちはその謎めいた性質に魅了され、この古代文字に秘められた秘密を解く鍵を今も探し続けている。

■タルタリアのタブレット

 ルーマニアで発掘された「タルタリアのタブレット(Tartaria Tablets)」は、紀元前約5300年にまで遡る考古学的発見であり、一連の謎めいたシンボルが刻まれた3枚の粘土板で構成されているこの石板は研究者や考古学者の注目を集めている。石板に刻まれた一連の文字は既知の最古の文字の形式の1つであるともいわれている。

画像は「Wikimedia Commons」より

 これらの文字の目的と意味は、明確な言語的または文化的背景が欠如しているため専門家を困惑させている。世界最古の文明のひとつであるこの文明に属する原始的な文字の形式か、または初期のコミュニケーションの試みを表しているのではないかと考える者もいるが、象徴的または儀式的な意味があるのではないかと主張する専門家もいる。

 初期人類文明の研究におけるタルタリアのタブレットの解読は、その古さ、限られた文脈情報、および比較可能な言語資料の欠如により大きな課題を抱えており、考古学者、言語学者、歴史家の間で、これらの古代遺物の真の性質と意図された用途を解明することを目的とした議論と研究が今も続いている。

■黄金のオルフィスムブック

 1955年にブルガリアの運河建設中に見つかった古代の墓が誤って開けられてしまい、その中にあったのがこの「黄金のオルフィスムブック(Golden Orphism Book)」である。

画像は「YouTube」より

 24カラットの金で作られた6枚のシートが冊子のように綴じられており、現在のイタリアで栄えた古代エトルリア文明にまで遡る歴史的遺物であるこの黄金のオルフィスムブックには、未解読の単語や文法要素が多数含まれており、謎に満ち溢れている。

 エトルリア語は古ヨーロッパ言語の1つと考えられているため、その完全な意味を解読しようとする学者や言語学者にとって大きな課題となっている。同時代の翻訳テキストや文脈情報が欠如しているため、この古代文字の目的と内容を理解する取り組みはさらに複雑になっている。

 黄金のオルフィスムブックの起源、それが表す言語、そしてその作成の背後にある意図は今も進行中の研究対象である。文字の複雑な性質と同様の遺物の欠如により、この金の冊子は研究者の間で魅惑的なミステリーとなっており、古代エトルリア文明とその謎めいた古代言語についての学術的研究を刺激している。

■ディスピリオタブレット

 ディスピリオタブレット(Dispilio Tablet)はギリシャ北部で発見された重要な考古学的発見で、その起源は紀元前5202年頃まで遡り、既知の最古の文書遺物の1つとなっている。新石器時代のディスピリオ村の近くで発見されたこの木製のタブレットには古代の文字を形成する一連の記号が刻まれており、初期の文字や象徴的なコミュニケーションの形式を示唆している。

「Ancient Origins」の記事より

 タブレットに刻まれたシンボルは未解読のままであり、タブレットの古さと入手可能な状況の制限により、研究者にとっての課題となっている。比較可能なテキストや参照可能な他言語が存在しないため、記号の解釈をさらに複雑にしている。

 専門家らは、ディスピリオタブレット上の文字は、情報やコミュニケーションを記録する原文、または初期の試みの一形態を表している可能性があり、おそらく貿易、儀式、文化的慣習などの社会風俗の要素を描写している可能性があると考えている。しかしこれらのシンボルの本当の意味と目的は依然としてとらえどころがなく、興味をそそる学者や考古学者は、その秘密を解明し、古代の人間の表現形態について理解を深めるためにこのタブレットの探索と分析を続けている。

■サナア写本

 1972年にイエメンのサヌアのグランドモスクで発見されたサナア写本(Sanaa manuscript)は、現存する最古のコーラン写本の1つである。

画像は「Wikimedia Commons」より

 サナア写本は、聖書のテキストを含む羊皮紙の断片で構成されており、標準化されたコーランのテキストとは異なる表記や文字のバリエーションなど、いくつかの独自の特徴が存在することで注目されている。

 サナア写本はは再利用された羊皮紙に書かれたパリンプセスト(palimpsest)である。パリンプセストは元の文字が消去され、その上に新しい文字が書き込まれているのだが、現代の科学により消去されたテキストを判読することが可能になっている。消された記述はきわめて初期のヒジャジ(Hijazi)文字で書かれた、ユニークなバージョンのコーランを示していたのである。

 古代の写本であるサナア写本はコーランの初期段階とその文字形式の発展についての洞察を提供する可能性があるとして注目を集めている。彼らの発見はコーランの伝承の多様な歴史的側面への窓を提供し、初期イスラム時代とコーランの歴史的進化の理解に貢献するものだが、その解読と理解は今も依然として学術的な調査と議論の対象である。

 古代史を研究する学者に立ちはだかる謎の言語で綴られたこれらの未解読の原稿を解明することは、単なる古代語の翻訳だけではなく、失われた言語、忘れられた知識、そして現代人がまだ知らない価値の探求でもあるのだろう。

参考:「Ancient Origins」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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