「AIが心を読む」人間の思考を“リバースエンジニアリング”する恐怖の「読心術AI」ついに誕生

日進月歩で進化を続けるAIはついに“読心術”をマスターしたのか――。人間の“次の行動”を驚くべき精度で予測できるAIが誕生したのだ。
■“読心術”をマスターしたAIが誕生
スーパーやコンビニでパンと卵をカゴに入れたお客が次に手に取る商品は?
もちろん人それぞれ異なるだろうが、そのお客の人物特性や時間帯、お店の立地といったデータなどから複雑な意思決定を予測できる可能性はあるのかもしれない。
そしてこの度、独ミュンヘンのヘルムホルツセンター(HMGU)をはじめとする研究チームは、事実上あらゆる心理学実験において人間の行動を正確に予測できるAI「Centaur(セントール)」を開発した。ちなみにCentaurはギリシャ神話に登場する上半身が人間、下半身が馬の姿をした種族「ケンタウルス」の英語表記である。
このAIはこれまで科学者が何十年も使用してきた特殊なコンピュータモデルを凌駕する性能を誇るという。6万人以上の人々が1000万回以上の意思決定を行ったデータで訓練された「Centaur」は、我々の思考、学習、そして選択の根底にあるパターンを捉えているという。
「人間の心は驚くほど普遍的です」と、研究チームは7月に「Nature」で発表した論文に記している。
「私たちは朝食のシリアルを選んだり、服を選んだりといった日常的な決断をするだけでなく、がんの治療法を考え出したり、宇宙を探査したりするといった複雑な課題にも取り組んでいます」(研究論文より)
人間の認知を真に理解するAIは、マーケティング、教育、メンタルヘルス治療、そして製品デザインに革命をもたらす可能性がある一方、我々のデジタル上の意思決定の痕跡がこれまで以上に多くの情報を提供するとなれば、プライバシーや情報操作に関する厄介な問題も生じてくる。
研究チームは、あらゆる心理学実験における人間の行動を予測できる単一のAIモデルを構築するという野心的な目標を掲げ、記憶テスト、学習ゲーム、リスクを伴うシナリオ、道徳的ジレンマなどの160の実験を含む「Psych-101」と呼ばれるデータセットを構築した。
さらに「Meta」社の「Llama 3.1言語モデル」(ChatGPTと同型)をベースに、人間の行動に関する特別な学習を施した。学習プロセス全体は、ハイエンドのコンピュータプロセッサでわずか5日間で完了したという。
テストの結果、「Centaur」は競合システムを圧倒する予測精度を見せたのだ。科学者たちが数十年かけて完成させた特殊な認知モデルと直接比較したところ「Centaur」はほぼすべての実験で優勢であった。
さらに驚くべき発見として、人間の行動を学習した「Centaur」は結果的に人間の脳活動を正確に再現していたのである。

人間の意思決定を学ぶ過程において、AIは人間の認知のさまざまな側面を“リバースエンジニアリング”したとも言えるのだ。
「私たちは、仮想実験室のように、自然言語で記述されたあらゆる状況における人間の行動を予測できるツールを作成しました」と筆頭著者のマルセル・ビンツ氏は声明で述べている。
驚くべき「Centaur」の予測能力だが、研究はまだ始まったばかりである。現在のバージョンは主に学習と意思決定に焦点を当てており、社会心理学や異文化間の違いといった分野のカバー範囲は限定的である。またデータセットは欧米の教育水準の高い集団に偏っており、これは心理学研究によくある制約でもある。
しかしながら心理学研究のあらゆる分野において、人間の行動を前例のない精度で予測できるAIが初めて誕生したことの衝撃は大きい。近い将来にAIが完璧な“読心術”を獲得した時にそれをどう活用していくのか、まさに我々の“人間性”が問われてくるのだろう。
参考:「StudyFinds」ほか
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