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【伝説の放送事故】“マジシャンが生放送中に死亡”？ 1300万人が震撼したBBCハロウィーン特番の恐怖

2025.10.09 20:00 編集部

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【伝説の放送事故】“マジシャンが生放送中に死亡”？ 1300万人が震撼したBBCハロウィーン特番の恐怖の画像1 — 画像は「YouTube」より

「すべてが見た目通りとは限りません」

　1987年10月31日、ハロウィーンの夜。英国営放送BBCで生放送された特別番組『ポール・ダニエルズ・ライブ・アット・ハロウィーン』は、こんな不穏な言葉で始まった。そして番組のクライマックス、1300万人以上の視聴者は、国民的人気マジシャンが、想像を絶するほど悲惨な死を遂げる瞬間を目の当たりにした…かのように見えた。

鉄の処女からの脱出―国民が目撃した“公開処刑”

　番組の司会は、英国で絶大な人気を誇ったマジシャン、ポール・ダニエルズ。ユーモアあふれる手品で長年お茶の間を沸かせてきた彼だったが、この日のクライマックスでは、いつになく真剣な表情を見せていた。

「これはジョークではありません。失敗する可能性もあります」

　彼が挑戦するのは、中世の拷問器具「鉄の処女（アイアンメイデン）」からの脱出マジック。内部に110本もの鋭い鉄の杭が突き出た棺桶型の装置だ。彼は自ら鎖で縛られ、首かせをはめられ、その不気味な箱の中に閉じ込められる。

【伝説の放送事故】“マジシャンが生放送中に死亡”？ 1300万人が震撼したBBCハロウィーン特番の恐怖の画像2 — 画像は「YouTube」より

　秒針が進む中、ダニエルズは必死にもがく。しかし、脱出は間に合わなかった。無情にも、鉄の処女の扉は「ガシャン」という音とともに閉ざされてしまう。

【伝説の放送事故】“マジシャンが生放送中に死亡”？ 1300万人が震撼したBBCハロウィーン特番の恐怖の画像3 — 画像は「YouTube」より

　静寂。そして、場内に響き渡る「観客の皆さんは、速やかに退場してください」というアナウンス。ダニエルズは、二度と箱から出てくることはなかった。番組はそのままエンディングクレジットを流し、何事もなかったかのように次の番組『モンティ・パイソン』が始まった。

鳴り響く電話、BBCへの非難―すべては計算された“パニック”だった

　その直後から、BBCの電話交換台はパンク状態に陥った。「ポール・ダニエルズは死んだのか？」。1100件を超える問い合わせが殺到し、局内は大混乱に陥った。国民的マジシャンの凄惨な“事故死”は、英国中をパニックに陥れたのだ。

　しかし、これはすべて、ダニエルズと番組プロデューサーが仕掛けた、壮大な“トリック”だった。彼は後日、この騒動が、1938年にオーソン・ウェルズがラジオドラマ『宇宙戦争』で人々をパニックに陥れた事件にインスパイアされたものであると告白。「大騒ぎを巻き起こせ」というプロデューサーの指示のもと、意図的に視聴者を恐怖に陥れたのだ。

　もちろん、番組の最後には「ダニエルズは無事です」というテロップが流れ、約20分後には、事前に収録された本人からの無事を知らせるメッセージも放送された。しかし、『宇宙戦争』の時と同じく、多くの視聴者はその部分を見逃し、ただただ恐怖と混乱だけが残った。

繰り返されるBBCの“悪趣味な悪戯”

「悪趣味なスタントだ」「やりすぎだ」。メディアや視聴者からの批判は凄まじかった。特に、前年に同じBBCの番組で、リハーサル中に死亡事故が起きていたこともあり、その非難は一層激しいものとなった。

　しかし、BBCは「悪趣味だとは考えていない」として、ダニエルズにも番組にも何のお咎めもなし。そして驚くべきことに、BBCはこの後も、ハロウィーンに懲りずに“悪戯”を繰り返す。

　1992年に放送された『ゴーストウォッチ』は、ある家に出没するという悪霊「パイプス」の謎を追う、という体のモキュメンタリー番組だった。あまりにリアルな心霊現象の映像と、著名な司会者たちの迫真の演技により、多くの視聴者がこれを本物のドキュメンタリーだと信じ込んでしまった。この番組が原因で、ショックのあまり産気づいた妊婦や、PTSD（心的外傷後ストレス障害）を発症した子供たちがいたとさえ言われている。

　ポール・ダニエルズは、後にこう語っている。「毎週同じようなショーをやっていれば、革新性がないと叩かれる。でも、新しいことをやれば、こうして文句を言われる。結局、どうやっても勝ち目はないんだ」。

　テレビというメディアが、まだ絶大な力を持っていた時代。人々は時に騙され、恐怖し、そして熱狂した。ポール・ダニエルズの“公開処刑”は、そんな時代の狂気と熱量を象徴する、伝説の放送事故として、今も語り継がれている。