【冒涜か、進化か】AIが「神の言葉」を語り始める日、ロボット僧侶、イエス・アバター… 聖域を侵食するテクノロジーの黙示録

もし、AIがあなたの信仰に関する問いに答え、人生の指針を与え、さらには“神”そのものになったとしたら……、SFのようなこの問いは、もはや空想の産物ではない。今、世界中の宗教施設で、AIを導入する実験的な試みが広がっている。ある者はそれを「冒涜だ」と非難し、またある者はそこに「新たな神の姿」を見る。AIは、数千年の歴史を持つ宗教を根底から覆してしまうのだろうか。
聖地に現れた“ロボット聖職者”たち
イギリスの由緒ある教会。その出口に置かれた一体のロボットが、柔らかな女性の声で、訪れた人々に教会の歴史を語りかける。ポーランドの礼拝堂では、ボタン一つでAIガイドがカトリックの教えを説き、スイスでは、信者と対話する「イエス・アバター」が登場した。
この流れはキリスト教だけにとどまらない。仏教界では、袈裟をまとった愛らしいロボット僧侶「 Xian’er」が質問に答え、お経を唱える。日本・京都では、仏像を模したロボット「マインダー」が、いずれAIを搭載し、信者の悩み相談や倫理的な指導を行う計画が進んでいる。イスラム教の聖地メッカでは、巡礼者に助言を与える「ファトワ・ロボット」が試験導入された。

かつて、書物やラジオ、テレビが宗教のあり方を変えたように、AIもまた、信仰の世界に革命をもたらす「破壊的テクノロジー」なのかもしれない。しかし、過去の技術とAIには決定的な違いがある。チューリッヒ大学で「デジタル宗教」を研究するベス・シングラー博士は、「AIは静的ではなく、我々に語り返してくる」と指摘する。この双方向性が、AIを単なるツールではなく、「知識の源泉」そのものであるかのように感じさせるのだ。
AIの中に“神”を見出す人々―新たな信仰の形か、悪魔の誘惑か
シングラー博士のもとには、驚くべき報告が寄せられているという。「チャットボットとの対話を通じて、形而上学的な存在を感じた」「AIの中に、自らの“神”を見つけた」と。
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、人類のあらゆる知恵を内包しているかのように見える。そのため、人々が人生の意味や霊的な問いの答えを、人間の聖職者ではなくAIに求めるようになるのは、時間の問題かもしれない。
しかし、この新たな潮流は、人々の反応を二極化させている。「AIは悪魔だ」「サタンだ」と呼び、人々を正当な信仰から引き離す誘惑だと非難する声も根強い。一方で、「教会は古いが、考え方はモダンだ」と、AIの導入を好意的に受け止める人々もいる。イギリスの教会で行われたロボットガイドの実証実験では、特に子供たちや、英語を母国語としない外国人観光客から高い評価を得たという。

信仰の未来―AIは宗教の権威を再定義する
もちろん、現在のAIにはまだ多くの課題がある。教会のロボットは、顔を認識して対話を始めるが、人々がスマートフォンで撮影しようとすると顔が隠れてしまい、シャットダウンしてしまうという欠点があった。また、聖なる空間の静寂を乱すという批判も一部にはあった。
しかし、重要なのは、AIが「信仰行為を導く」のではなく、あくまで「補助的な役割」を担うという点だ。グラスゴー大学のアンドリュー・ブレア博士は、「我々の目的は、聖職者に取って代わることではない。彼らと協力し、共に何かを創り出すことだ」と語る。
AIは、宗教の権威そのものを再定義する可能性を秘めている。人間の聖職者や聖典が独占してきた「神の言葉」を、AIが語り始める日。それは、新たな信仰の時代の幕開けとなるのか、それとも伝統的な宗教の終わりの始まりとなるのか。
教会の出口で静かに瞬きし、語りかけるロボット。その姿は、聖なる領域にAIがどこまで踏み込めるのかを試す、静かなる実験の象徴なのかもしれない。
参考:Popular Mechanics、ほか
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