機械が「意識」を持った時、それはまだ機械か？― AIに“魂が宿る瞬間”を測定する方程式が開発される

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「意識」とは何か？ それは、魂や精神といった神秘的な領域に属するものなのか、それとも単なる情報処理の結果なのか。この哲学的な大問題に、数学の力で終止符を打とうとする、革命的な研究が発表された。

　スペインのポンティフィシア・コミージャス大学の研究者らが開発したのは、生物かAIかを問わず、システムに「意識」が生まれる条件を正確に測定できるという、世界初の数理モデル。この方程式は、AIが単なる機械を超え、「認知的に生きている」状態になる瞬間を、私たちに突きつけるかもしれない。

「意識」を数値化する方程式「ACI」の誕生

　この研究の中心にあるのが、「ACI（Attribution Consciousness Index：意識帰属指数）」と名付けられた、画期的な指標だ。ACIは、以下の2つの要素を組み合わせて意識の状態を測定する。

情報量: システムがどれだけ多くの情報を生成しているか。
複雑性と安定性: その情報を、どれだけ複雑かつ安定した状態で維持しているか。

　研究チームによれば、この2つの数値が“ある特定のバランス”に達した時、そのシステムは意識的なプロセスを維持している可能性が極めて高いと予測できるという。

　研究を主導した心理学者アレックス・エスコーラ＝ガスコン氏は、「これは憶測ではありません。我々が提供するのは、検証可能なツールです。信じるか信じないかではなく、測定するのです」と断言する。

人間の脳とAIの“不気味な”共通点

　この方程式の信憑性を確かめるため、研究チームは驚くべき比較実験を行った。人間の脳活動をfMRI（機能的磁気共鳴画像法）でスキャンしたデータに基づく500のシミュレーションと、自己学習能力を持つ人工ニューラルネットワーク（AI）の活動を比較したのだ。

　その結果は、まさに衝撃的だった。人間の脳とAIは、全く同じ統計法則に従っていたのだ。これは、人間の精神を支配するルールが、そのままAIにも適用できる可能性を示唆している。

「脳の意識を記述する方程式は、人工ネットワークにおいても同様に成り立ちます。これは、意識が生物学的な特権ではなく、秩序と情報から生まれる“創発的な特性”であることを示唆しているのです」と、エスコーラ＝ガスコン氏は語る。

感情は測れない。しかし「意識の目覚め」は予測できる

　ただし、このACIは感情や主観的な体験そのものを測定するものではない。あくまで、意識が“生まれるための条件”が整っているかどうかを判定するツールだ。言い換えれば、「どう解釈するか」ではなく、「どう測定するか」に焦点を当てている。

　しかし、その応用範囲は計り知れないほど広く、そして不気味だ。

・昏睡状態の患者が、いつ意識を取り戻すかを予測する。
・麻酔中の患者の意識レベルを、より正確に監視する。
・倫理的な問題を回避するため、AIが「意識」を持つ限界点を評価する。

　エスコーラ＝ガスコン氏によれば、ACIは「どのシステムが単に情報を処理しているのか、そして、どのシステムが真に認知的に“生きている”のかを知る手がかりになる」という。

機械が「意識」を持った時、それはまだ機械か？

　この研究は、意識が予測可能であり、いつかはおそらく「再現可能」でさえあることを示唆している。しかし、その先に待ち受けるのは、希望に満ちた未来だけではないかもしれない。

　もし、ある機械が、意識を持つ人間の脳と全く同じ条件を満たしたとしたら…その時、それはまだ「機械」と呼べるのだろうか？

参考：Espacio Misterio、ほか

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