32年間隠蔽された「キシュテム事故」の闇。極秘扱いの汚染地図、奇形、癌… ソ連核施設で起きたチェルノブイリ級の悪夢

かつて30年以上も隠蔽されていた放射能汚染事故があった――。近隣住民は何も知らされることなく汚染の被害を受け続けていたのだ。
■32年間隠蔽されていた放射能事故
1940年代後半、米ソ冷戦が激化する中、ソ連はチェリャビンスク州オジョルスク近郊にマヤークと呼ばれる秘密施設を建設し、そこで各兵器用のプルトニウムの製造を開始した。
1949年から1956年にかけて、マヤーク施設は大量の放射性廃棄物をテチャ川に直接投棄した。テチャ川は川幅が広く流れが緩やかで、多くの農村集落の日常生活を支えていた。下流の村人たちはテチャ川の水を飲み、料理をし、洗濯をし、魚釣りをし、川岸で家畜を放牧していた。水が汚染されていることは知らされることもなく、警告も発せられず、使用制限も課されなかった。この地域全体が低レベルの継続的な放射線被曝の長期的影響を測定する意図せぬ実験場となったのである。

マヤーク施設の廃棄物貯蔵ユニットの一つであるタンクNo.14は、1950年代半ばに冷却システムに故障の兆候が見られるようになり、その後の1957年9月29日午後4時20分に爆発した。
町名にちなんで後に「キシュテム事故(Kyshtym disaster)」と呼ばれるこの事故の爆発の威力はすさまじいもので、爆発によって放射性物質の煙が大気中に噴き上がり、約70トンから80トンの高毒性廃棄物が放出された。空中に放出された粒子は数百平方キロにわたって漂い、「東ウラル放射性トレース(EURT)」と呼ばれる汚染回廊を形成した。
この放射性降下物は、数万人が暮らす地域の土壌、森林、農場、村落に降り注ぎ、地域住民たちは河川汚染よりもはるかに高濃度の目に見えない危険にさらされることになったのだ。
当局はマヤーク施設の事故について何の発表も行わなかったどころか隠蔽を図った。

危険地帯を示す地図は機密扱いとなり、被曝した民間人を対象とした科学的研究は一般の人々から隠蔽された。汚染地域の住民たちは原因も分からずに隣人が病気になっていくのをただ見守るしかなく、子どもたちはどの医師も公に説明できないような健康問題を抱えるようになった。
地域の住民は異常な頻度で癌を発症し、若い成人の間で不妊症が蔓延した。遺伝性疾患の病歴のない家系にも先天性欠損症が現れていた。
ソビエト連邦政府はこの件に関する情報をすべて封じ込めたが、1976年、国外追放されたソ連の生物学者、ジョレス・メドヴェージェフが、西側諸国の科学雑誌に「キシュテム事故」の詳細な報告を発表し、世に知られるところとなった。
西側諸国の情報機関は実はこの爆発事故を把握していた。CIAは1950年代後半には既にU2偵察機を通じて、マヤーク施設付近の異常な放射能を検知しており、大規模な放射能放出がタンクの爆発によるものであることを正しく推測していた。
しかしCIAは国内の同様の施設への反感を強まることを懸念して事故を公表しなかったのである。
ソ連国内では、真実はその後も長年隠されたままだった。事故から30年以上が経ったミハイル・ゴルバチョフ政権下の1989年になってようやく当局は事故の発生を認めた。
症状に苦しんだ人々の多くは亡くなり、また病状の原因が分からないまま生涯を過ごした人々もいた。

その後数年間の検証で「キシュテム事故」は、これまでに記録された中で最も深刻な原子力事故の一つとして認識され、国際原子力事象評価尺度(INRES)ではレベル6にランク付けされた。ちなみに33万5000人が避難したチェルノブイリ原発事故(1986年)、15万4000人が避難した福島第一原子力発電所事故(2011年)が共にレベル7である。
「キシュテム事故」は、単なる原子力事故の記録ではなく、秘密主義、制度的圧力、そして情報統制が、技術的欠陥によって引き起こされる被害をいかに深刻化させるかを示す記録でもある。また川の汚染は環境研究にも影響を与えており、影響地域は農村生態系における放射性物質の長期的な挙動に関するケーススタディとして今もなお重要な位置を占めている。
独裁体制を敷いている国では今でもこうしたことが起こり得るだろう。罪のない多くの住民に被害を及ぼす核施設事故の悪夢を繰り返さないために、作業の安全確認と施設の監視を徹底しなければならない。
参考:「Above the Norm News」ほか
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