月を目指す英雄の「給与明細」は意外と現実的? アルテミス2号が挑む有人探査の裏側

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By Gregory Reid Wiseman/NASA – NASA Image and Video Library, Public Domain, Link

 かつて人類が月面に足跡を刻んでから数十年。今、再び人類が月の裏側へと向かっている。2026年4月1日、全長約98メートルの巨大ロケットが4人の宇宙飛行士を乗せ、地球を後にした。NASAのクリスティーナ・コック、リード・ワイズマン、ビクター・グローバー、そしてカナダ宇宙庁(CSA)のジェレミー・ハンセン。彼らが挑む「アルテミス2号」ミッションは、単なる宇宙旅行ではない。人類が再び深宇宙へと進出するための、極めて重要なテストフライトだ。

 地球を離れてから25時間は地球周回軌道に留まり、宇宙船オリオンのシステムを入念にチェック。コックピットから見える地球の姿を、ワイズマン船長は「驚異的だ」と報告している。その後、船は地球の重力を振り切り、月の裏側を目指して時速数万キロで加速。月を越えて約6400キロ先まで到達する予定で、地球からの距離は約40万5500キロにも及ぶ。これは、人類が到達した最も遠い地点の一つとなる。

命がけのミッション、その「年収」は高いか安いか

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左から時計回りにコック、グローバー、ハンセン、ワイズマン Josh Valcarcelflickr.com, パブリック・ドメイン, リンクによる

 歴史に名を刻むミッションに挑む彼らだが、ふと気になるのがその「待遇」だ。世界中が注目するヒーローなのだから、億単位の報酬を得ている……と思いきや、現実は驚くほど「公務員」である。

 NASAの宇宙飛行士は連邦政府の給与体系に基づいており、経験や階級によって年収が変わる。NASAの公式情報では約15万2258ドル(2024年基準)とされているが、実際の多くは約9万ドル〜12万3000ドル前後(現在のレートで約1400万円〜1950万円程度)だ。一方、カナダ宇宙庁(CSA)の基準では、経験に応じて約9万7100ドルから約18万9600ドルの範囲となっている。

 日本の感覚で言えば「かなりの高給取り」に見えるかもしれない。だが、求められるスキルの高さと、常に死と隣り合わせというリスク、そして何年も続く過酷な訓練期間を考えると、これを「夢のような報酬」と呼ぶには少し現実味を帯びすぎている気もする。彼らを動かしているのは金銭的なインセンティブではなく、歴史の一部になるという誇りと、純粋な知的好奇心なのだろう。

倍率800倍。超エリートのみが通れる「狭すぎる門」

 宇宙飛行士への道は、日本の宝くじを当てるより難しいかもしれない。2024年にNASAが募集を出した際、8000人以上の応募者に対して採用されたのはわずか10人。これまでに選ばれた宇宙飛行士は、歴史を通じてもわずか370人ほどだ。

 条件も極めて厳しい。STEM分野(科学・技術・工学・数学)の修士号、あるいは医学博士号、またはテストパイロットとしての華々しい経歴が必須となる。さらに身体的な制約もあり、身長は157cmから188cmの間でなければならない。

 選考プロセスも熾烈だ。ヒューストンのジョンソン宇宙センターで行われる面接は、技術的な知識だけでなく、極限状態での心理的な安定性も徹底的に試される。選ばれた後も、船外活動のシミュレーションや緊急時プロトコルの習得など、気の遠くなるような準備が待っている。

月の裏側を経て、その先にある「火星」へ

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アルテミスIIの計画図 NASA – https://www.nasa.gov/image-feature/artemis-ii-map, パブリック・ドメイン, リンクによる

 今回のアルテミス2号は月面に着陸するわけではない。最大の目的は、有人飛行における生命維持システムや操縦能力が、過酷な宇宙環境で正しく機能するかを検証することだ。

 約10日間の旅を終えたオリオンは、太平洋への着水を予定している。ここでの成功が、次なるステップである「月面着陸」、そして数十年後に見据える「有人火星探査」への絶対条件となる。

 月の裏側という、地球との通信さえ途絶える未知の領域で、彼らが収集するデータの一つひとつが、未来の宇宙移住への礎となる。英雄たちの帰還を待つ間、私たちは彼らが手にする給与の額面ではなく、彼らが人類に残す「無形の資産」に思いを馳せるべきなのかもしれない。

参考:Misterios do Mundo、ほか

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