「塩を空に撒いて地球を冷やす」科学者が提唱する”雲の日焼け止め”計画の可能性と危険性

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Image by Gianluca from Pixabay

 気候変動の「最後の手段」として、空に塩を撒くというアイデアが本格的な科学プロジェクトへと進化しつつある。英マンチェスター大学の研究チームが取り組む「Reflectプロジェクト」は、塩水の微粒子を雲に噴霧して太陽光の反射率を高める「雲の白色化(クラウド・ブライトニング)」という手法を検証している。発想だけ聞くとSFじみているが、実は自然界でも起きている現象を応用したものだという。

「雲を日焼け止め代わりにする」という発想

 雲の白色化とは、雲の中に微細な塩の粒子を加えることで雲をより白く、より明るくし、太陽からの放射を宇宙へ反射させるという技術だ。いわば雲を天然のサンシールドとして機能させる試みである。

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画像は「Daily Mail」より

 この原理は、実は科学者たちが以前からよく知っている現象に基づいている。大規模な火山噴火が起きると、大量のエアロゾルが大気中に放出されて雲が増え、地球の気温が一時的に下がることがある。過去にも1991年のピナトゥボ火山噴火後に世界規模の気温低下が観測されており、自然がやっていることを人工的に再現しようというわけだ。

 さらに少々皮肉な話もある。ディーゼル燃料を大量に消費するタンカーや工場の排煙も、実は雲を白くする効果を持っていた。しかし海運業界の排ガス規制が強化されたことで、北東太平洋や大西洋の雲の反射率がこの10年間で約3%低下し、結果的に温暖化を加速させてしまったとされている。「環境対策が意図せず温暖化を後押しした」という逆説的な状況だ。

3階建ての「雲チャンバー」で粒子サイズを最適化中

 現在、研究チームはステンレス製の3階建て「クラウドチャンバー(雲発生装置)」の中で、塩水エアロゾルの粒子サイズを精密に調整している。いわゆる「ゴルディロックス(ちょうどいい)サイズ」を探している段階だ。

 粒子が大きすぎると、大気中にもともとある粒子を置き換えてしまい、自然な雲の形成を妨げる。逆に小さすぎると、水蒸気が凝結して雲粒になる「活性化」がうまくいかず、雲を十分に白くできない。このちょうどいい塩梅を探ることが、今の研究の核心である。

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画像は「Daily Mail」より

 来年にはビニールハウスのような大型の管理環境でスケールアップしたテストを予定しており、英国の研究・開発機関「ARIA(先進研究・発明機関)」から承認が得られれば、2年以内にイギリス沿岸での野外試験へと進む計画だ。試験では塩水のプルーム(煙状の塊)を沿岸から数マイルの海上に数分間噴霧し、ドローンやライダー(レーザーレーダー)でその動きを追跡する。プロジェクト全体の予算は600万ポンド(約11億円)で、ARIAが支援する5700万ポンド規模の気候工学プログラムの一環として位置づけられている。

 プロジェクトを率いるマンチェスター環境研究所所長のヒュー・コー教授は、この手法を「気候変動の万能薬」とは考えていないと明言している。「長期的な解決策は、大気中の炭素を減らすことだ。雲の白色化が与えるのは、排出量を削減するための時間的猶予に過ぎない。それもあくまで、削減が間に合わない場合の話だ」とコー教授は語る。

「副作用」への懸念——気象パターンへの影響は未知数

 一方で、この種の地球工学的介入には根強い批判と懸念が伴う。コロンビア大学気候スクールの研究では、「成層圏エアロゾル注入(SAI)」と呼ばれる別の太陽地球工学の手法が、熱帯のモンスーンシステムや海面水位、ジェット気流にまで影響を及ぼす可能性があることが示されている。地球のある場所で太陽放射の加熱量を変えれば、別の場所の大気パターンが変化する——これは直感的にも理解できる話だ。

 本プロジェクトに関与していないバーミンガム大学の雲の白色化の専門家イン・チェン博士も「太陽放射の加熱を一か所で変えると、別の場所の大気パターンが変化する可能性がある。ただし、それがどの程度の規模になるかはまだわかっていない。早急な追加研究が必要だ」と語っている。

 コー教授自身も「大規模にやれば天気パターンに影響が出る。だが気候変動によってすでにそれは起きている」と認める。問題は、「何もしないリスク」と「介入するリスク」のどちらが大きいか、という比較衡量だ。批判的な研究者からは、地球工学が「排出削減をさぼる言い訳」になることへの懸念も根強い。原因に手をつけずに症状だけを抑えるような手法、という見方だ。

 将来的に技術が安全・有効と確認されれば、太平洋や大西洋の低層雲が広がるエリアを対象に大規模な雲の白色化を実施し、化石燃料からの脱却が進む間の「時間稼ぎ」として機能させることが想定されている。「しないよりはましかもしれない」という消極的な希望と、「やってみたら取り返しがつかない」という恐怖の間で、科学者たちの研究は続くようだ。

参考:Daily Mail、ほか

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