熱帯の火山が噴火するとアジアで大飢饉が起きる? 1000年以上の謎を解明した「死のドミノ倒し」のメカニズム

地球の裏側で火山が噴火すると、私たちの食卓からご飯が消えるかもしれない――。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあるが、地球の気候システムはそれ以上に複雑で、そして残酷だ。熱帯地方で巨大な火山噴火が起きると、南アジア(インドなど)と東アジア北部(中国北部など)という、地球上で最も人口が密集する2つの農業地帯で「同時多発的に大干ばつ」が発生することが歴史的に知られていた。
しかし、何千キロも離れた2つの地域がなぜ同時に干上がるのか、そのメカニズムは長年謎に包まれていた。今回、武漢大学と東京大学の共同研究チームが、少なくとも1000年以上前から作動していたこの「見えない大気の連鎖反応」の全貌を科学誌『Nature Communications』でついに解き明かした。
空高くで繰り広げられる「死のドミノ倒し」のプロセスとは。
火山灰が太陽を遮り、巨大な「波」を生み出す
すべては、熱帯の火山が成層圏に大量の「硫酸エアロゾル(火山灰の粒子など)」を吹き飛ばすことから始まる。
この粒子が地球を覆う日傘のような役割を果たし、地表に届く太陽エネルギーを減少させる。すると海や陸地が冷え、南アジアのモンスーン(季節風)を発生させるための温度差が弱まってしまう。結果として、内陸に雨をもたらす巨大な雨雲が発達しなくなり、インド亜大陸は干ばつに見舞われる。ここまでは従来から分かっていたことだ。
今回の研究が明らかにしたのは、ここから先の「第2のドミノ」だ。
通常、熱帯の巨大な雨雲は、水蒸気が雨に変わる際に莫大な熱エネルギーを大気中に放出している。しかし、モンスーンが弱まりこの熱源が消失すると、周囲の大気はバランスを崩し、「ロスビー波」と呼ばれる巨大な大気の波(うねり)を発生させるのだ。

ジェット気流に乗って「干ばつ」がアジアを覆う
このロスビー波は、上空のジェット気流に乗って東へと伝わっていく。これが「テレコネクション(CGT)」と呼ばれる大気の循環パターンに干渉し、致命的な配置を生み出す。
具体的には、東アジア北部の高高度に異常な北風を送り込み、強力な「下降気流」を発生させてしまうのだ。下降気流は雲の形成を抑え込むため、本来なら中国東北部などを潤すはずのモンスーンの雨が降らなくなってしまう。
こうして、熱帯の火山噴火を起点とした大気の波が、南アジアと東アジアの両方から同時に雨を奪い去るという最悪のシナリオが完成するのだ。
1815年のタンボラ火山大噴火の悪夢、再び?
研究チームは、1657年まで遡る「木の年輪」のデータや、過去1000年以上の気候モデルシミュレーションを駆使して、この現象を立証した。エルニーニョ現象などの海面水温の影響を除外しても、火山噴火の翌年の夏には必ずこの「同時干ばつ」のパターンがくっきりと現れたという。
歴史を振り返れば、1815年に起きた観測史上最大の「タンボラ火山(インドネシア)の大噴火」の翌年、インド亜大陸で大飢饉が発生し、中国北部でも深刻な干ばつが記録されている。当時は「神の怒り」と恐れられた現象の裏には、この大気のメカニズムが働いていたのだ。

南アジアと東アジアは、世界の食糧生産の大きなシェアを占めている。もし現代において巨大な熱帯火山が噴火し、この2つの地域で同時に不作が起きれば、世界的な食糧危機が引き起こされるかもしれない。
さらに恐ろしいのは、現在の地球温暖化によってジェット気流の振る舞い自体が変化しつつあることだ。次に火山が火を噴いたとき、この「死のドミノ」が過去のデータ通りに動くのか、それともさらに予想外の被害をもたらすのかは誰にも分からない。
我々は、足元の地面の揺れだけでなく、遠い南の島で上がる噴煙にも警戒を怠ってはならないようだ。
参考:Above The Norm News、Light-induced emergence of collective modes in a Mott insulator (Nature Communications)
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2024.10.02 20:00心霊熱帯の火山が噴火するとアジアで大飢饉が起きる? 1000年以上の謎を解明した「死のドミノ倒し」のメカニズムのページです。火山、噴火、アジア、飢饉、干ばつなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで