>  > 【故宮展】中国・宋時代の青磁の素晴らしさを知ってる?

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――エカキで作家・マンガ家、旅人でもある小暮満寿雄が世界のアートのコネタ・裏話をお届けする!

 門外不出だった台北故宮博物院の至宝「肉と白菜」が日本に来るということで評判だった「特別展 台北 國立故宮博物院―神品至宝―」だが、実は「肉と白菜」どちらも2週間ほどの限定公開だ。しかも両方いっぺんに公開されるわけでなく、東京と福岡の2会場に分かれて片方づつお披露目ということは、あまり知られてないようだ。

 先日も友人から「上野に『故宮展』を観に行ったが、もう“白菜”がなくてがっかり。案内には『展示は終了しました』と書かれていた。目玉になってるだけあって、詐欺にあった感じ…」というメールをいただいた。

 さらに「上野の次は福岡展示と書いてあったので、福岡に行かねばなと思いつつ、1週間後に、たまたまふらっと東京白金台の『松岡美術館』に行ったら、なんと『白菜』が展示されていた。キツネにツママレた感じがしたが、あれは本物なのだろうか?」と続いていた。

いやいや、松岡美術館にあるものは、やや品質が落ちる別物。白菜が作られた清朝の時代には、翡翠に白菜とキリギリスの彫り物をした作品は、縁起物としてけっこう作られていたのである。

 それにしても、限定公開だと知らずに上野の展覧会に行き、がっかりして帰ってきた人…、結構多いんだよね。もちろん「詐欺にあった感じ」というのはわかるけど、実際の案内には公開期間や場所が明記されているので、文句のつけようがありません。注意して案内を読んでいただければと思います。

 さて、先にトカナ記事にも書いたように、肉と白菜は故宮の収蔵品の中では新参者もいいところ。とかく故宮はこの2大スターばかりに注目が集まるのだが、ほかに素晴らしい展示物はいくらでもあるので、そちらにも注目していただきたい。今回は、その中でも世界に37点しかないという、宋朝の青磁についてお話してみよう。


■学識が高い文官中心の「文治主義」が発展させた磁器芸術

 フェルメール並の希少さである青磁の名器だが、名品と呼ばれるものすべてが宋の時代(960~1279年)に作られているのである。

 宋の時代の前が、遣唐使で知られる唐の時代にあたるのだが、実際には唐が滅亡して50年…、5つの新しい王朝が興っては滅びる繰り返しを続けたのち、新しく興った王朝が「宋」だった。短命だった先の王朝らの反省から、皇帝となった宋の太祖が掲げた政策が文官を中心にした「文治主義」である。これが後に、素晴らしい青磁を誕生させる大元になる。

 唐代から途絶えていた科挙制度を復活させたのもこの時からで、それまで表舞台に立っていた貴族たちはこの時に姿を消した。かわりに難関をくぐり抜けてきた民間出身のインテリ層が時代をリードするようになり、社会を安定させ、経済を大いに発展させることになったのである。

 こうして、宋朝は美術工芸から書物といった文化面が大いに盛り上があり、チャイナ・ルネサンスと言わしめた黄金時代を築くのである。その中でも青磁、白磁といった磁器は宋朝文化の白眉と言っても過言ではなく、実際には肉も白菜も美術的な価値から言うと、これら磁器には遠く及ぶべきもないのだ(苦笑)。


■磁器とは何か?

 ところで、トカナ読者のみなさまに質問である。

 陶器と磁器。どこがどう違うのかご存知だろうか?

 ふむ、ボコボコしているのが陶器で、ツルツルしているのが磁器だろうって? なるほど、フィーリングに走った答えだけど、なかなか当を得ているかな。

 答えを申し上げると、陶器は素地の密度が低く焼き締まっていないのが特徴で、若干ながら吸水性がある。一方で磁器は、素地の密度がよく締まって高く、ガラス化しているのが特徴で、吸水性は無い。

 当然、陶器と磁器では使用されている土も異なる。陶器に使われる土は自由度が高く、粘土であるなら大抵のものがOKだ。

 一方、磁器に使う土は石が風化してできた特別な粘土が混ざっている。カオリン質といって、ガラス成分を多く含んだ長石というもので、高温で焼くと素地全体がガラス化する特徴がある。表面だけにガラス質の釉薬がかけられている陶器とは、その点が大きく違うのである。

 余談ながら、あの備前焼も素焼きながら素地自体がガラス化したものだ。正確に言うと、1200度という高温で焼かれると、土の中に含まれていたガラス質が外に溶け出してくるのである。素焼きながら独特の光沢があるのは、そのためだ。優雅でなめらかな磁器と、ゴツゴツして無骨な備前焼と、その点が共通しているというのはアートの面白さと言うべきだろうか。

 北宋と呼ばれた宋代初期、陶磁器に関して言えば、政府が窯業を税制面で優遇したため、全国各地で優れた磁器の生産地が各地で次々に生まれた。その中には、宮廷御用達となった窯元もあり、職人たちの技術が官営化される例も出てきたのである。

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画像は、『堪能故宮in台北―半日で巡る故宮博物院の精華』(まどか出版)より

 この時代の磁器を特筆するものとしては、絵付けをしていないシンプルな青磁と白磁の美しさだろう。

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