>  > 【本庄保険金殺人】嘘つき情報源とマスコミ

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片岡健

前編はコチラ

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八木死刑囚が収容されている東京拘置所

 東京高裁の再審請求即時抗告審で先月末、再審を開始しない決定を受けた「本庄保険金殺人事件」の八木茂死刑囚(65)。一貫して無実を訴えてきたが、報道で広まった「真っ黒」なイメージのため、高裁の決定に疑問を呈する声はほとんど聞かれない。

 しかし、この事件の実相は報道とずいぶん異なっている。前編では、八木死刑囚がクロだと印象づけた捜査段階の報道に「虚構」が多かったことを紹介した。後編ではまず、この事件の報道のずさんさを象徴する人物を紹介しよう。


■ある不可解な人物

 その人物の名は、建脇保氏。八木死刑囚が埼玉県本庄市で営んでいた金融会社の「元社員」だとか、八木死刑囚の「20年来の知人」などという肩書きで、捜査段階にテレビ、新聞、週刊誌とあらゆるマスコミに登場。そして以下のように八木死刑囚の悪事を吹聴していた人物だ。

「八木から『森田(保険金殺人の被害者とされる男性)を事故に見せかけて殺せば、お前の借金をチャラにして、3000万円をやる』と言われ、断ったことがある」

「八木の勧めで、母親を受取人にする3億円の保険に加入したら、知らないうちに八木の愛人と入籍させられ、保険の受取人が母親からその愛人に変更されていた」

 以上は建脇氏が当時、新聞、雑誌で語っていたことの要旨をまとめたものだ。いずれも本当なら、八木死刑囚がクロだと裏づける重大証言だ。

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建脇氏の著書『虫けら以下―本庄保険金殺人事件の軌跡』(太田出版)。顔写真は本人。

 さらに建脇氏は2001年に、太田出版から著書を上梓している。タイトルは『虫けら以下 本庄保険金殺人事件の軌跡』。建脇氏の命の重みを「虫けら以下」にしか思っていなかった八木死刑囚がどれほどひどい人間だったかということを「実体験」に基づき、克明に書き綴った本である。

 しかし、そんな建脇氏には、不可解なことがある。八木死刑囚の保険金殺人の手口、内実をこれほど詳細に証言できる人物であるはずなのに、裁判に証人として登場していないのだ。


■版元にも疑われていた『虫けら以下』の著者

「検察官は裁判で、建脇氏の4通の検察官調書を証拠請求しています。しかし、弁護人が不同意にしたら、建脇氏の証人尋問を請求しなかったのです」

 建脇氏が裁判に出てこなかった経緯について、八木死刑囚の弁護人、松山馨弁護士はそう説明してくれた。建脇氏はその4通の検察官調書でも、マスコミに話していたのと同様の八木死刑囚がクロだと裏づけるような証言をしていたという。にもかかわらず、検察官が証人請求しなかったのは、実は検察官も建脇氏のことを信用していなかったからに他ならない。弁護側の反対尋問に耐えられない証人だと判断したのだろう。

 実際、八木死刑囚の裁判では、建脇氏がマスコミに吹聴していた「ネタ」の信ぴょう性が否定されている。たとえば、「知らないうちに八木の愛人と入籍させられていた」という建脇氏の話について、その女性本人は裁判で次のように述べている。

「入籍は、建脇さんから頼まれたのです。建脇さんは借金を沢山つくり、ブラックリストに載っているとのことで、『建脇保という名前ではもう借金ができないので、名前を変えたい』とのことでした。入籍してくれたらお礼もする、とのことでしたが、お礼はもらっていません」(公判証言の要旨)

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