南海トラフで“163年分のひずみ”の蓄積が観測される!! 東大教授「いつ起きても不思議ではない」

 東日本大震災からはや6年が経過した。

 2016年3月、消防庁が発表したところによると、東日本大震災の死者数は19,418人にものぼったという。この中には震災関連死も含まれている。震災関連死とは、震災後の避難生活による体調悪化や過労など、震災の間接的な原因で死亡することで、これには自殺も含まれる。東日本大震災の震災関連死者数は戦後最悪となる、3,523人(昨年9月30日時点)。改めて、被害の甚大さが痛感される。

■専門家「いつ起きてもおかしくない」

南海トラフで163年分のひずみの蓄積が観測される!!  東大教授「いつ起きても不思議ではない」の画像1画像は「気象庁」より引用

 世界有数の地震多発地帯と言われる日本周辺では、複数のプレートがぶつかり合い、複雑な力がかかっている。「プレートテクトニクス」では、プレートが海溝に沈み込むことによる重みの移動が主な力となり、対流するマントルに乗ってプレートは動く、と説明される。プレートの移動とは、言ってみれば“地球が生きて、活動している”証し。地球が生きている限り、日本は常に地震の脅威に晒されている。その日本で、次に起こると懸念されている巨大地震のひとつが「南海トラフ地震」だ。

南海トラフで163年分のひずみの蓄積が観測される!!  東大教授「いつ起きても不思議ではない」の画像2画像は「気象庁」より引用

 南海トラフ地震は、最悪の場合、死者数33万人以上とも想定されている。政府はこの死者数を減らすため、震度6弱以上の激しい揺れが予想される29都府県、707市町村を防災対策推進地域に指定し、対策の強化を急いでいる。

 東日本大震災級、いやそれ以上の深刻な被害が予想される南海トラフ地震は、もはやいつ起きてもおかしくない状況だという。「ANNnews」が3月7日報告したところによると、南海トラフ周辺の地殻で強い“ひずみ”が溜まっていることが観測されたというのだ。

動画は「YouTube」より引用

 海上保安庁は海底の動きを直接観測するため、9年前から南海トラフの15カ所に観測機を設置していた。その観測データによると去年の1年間で、宮崎県日向灘沖で2センチ、さらに高知県沖では5.5センチの地殻変動が確認されたというのだ。このデータから、プレート境界面の地殻変動は一様でないことが実際に確認された。

南海トラフで163年分のひずみの蓄積が観測される!!  東大教授「いつ起きても不思議ではない」の画像3画像は「YouTube」より引用

 南海トラフのようなプレート境界面では、プレート同士が安定して滑らかにすべる領域と、圧力によって固定されすべりにくい“固着域”がある。この固着域にひずみが蓄積され、やがてプレートの耐力が限界に達すると一気にすべることで海溝型のプレート間地震が発生する。今回観測された高知県沖のように、より大きく地殻が動く場所の方が、固着性が高く、地震が発生する可能性が高いと考えられるのだ。「ANNnews」内で、東京大学地震研究所の平田直教授は、「(今回の観測結果を受けて)すでに南海トラフでは、いつ大きな地震が起きても不思議ではない状況になっている」と警鐘を鳴らしている。

 政府は過去の地震発生履歴から、今後30年間で60〜70%の確率で南海トラフを震源とする地震が起こるとする長期評価を発表している。この確率の受け止め方は人によって異なるだろうが、平田直教授が言うようにすぐそこに差し迫った脅威と認識しておく必要がありそうだ。

■複数のデータを総合して算出される地震予測

 さて、今後30年間で60〜70%の確率で起こると予測されている南海トラフ地震であるが、この地震予測とは一体どのように行われているのだろうか。こうした予測がどの程度信頼できるものなのか、検討するためにも知っておく必要があるだろう。

 南海トラフ地震は、主に3つの予測データを総合して予測される。1つ目は、過去に起きた南海トラフを震源とする巨大地震データから、時間間隔の平均を求め予測するというもの。南海トラフでは、西暦600年以降100〜200年の間隔でM8クラスの地震が繰り返し発生している。最も新しいのが、1946年12月、四国から紀伊半島沖を震源域とする昭和南海地震。間隔のばらつきを考慮すると、次の巨大地震は、2061年の前後35年。つまり2026〜2096年という広い範囲になってしまう。この範囲を狭めるために、他のデータと照らし合わせていく必要がある。

 2つ目が時間予測モデルと呼ばれるもの。プレート境界地震が発生すると、トラフに向かう岬は隆起し、次の地震までにその大部分は沈降して元に戻る。この原理を利用して、隆起の大きさを調べることによって、それが元に戻るまでの時間を予測することができるという訳だ。実際、室戸岬北西の室戸港の変位量が解析され、その結果次の地震は2040年ごろと予測された。

 3つ目の予測方法が、地震活動期から予測するという方法。過去のデータから、南海トラフ地震発生の約50年前から発生後約10年の間、西南日本内帯で地震活動が活発化することが分かっている。1995年の兵庫県南部地震が新たな地震活動期の始まりだと考えられており、活動期の終わり頃、2030年代後半に南海トラフ地震が予想される。

 以上のような予測データを総合して、2030~2040年に高確率で南海トラフ地震が発生することが予測されていたのだが、今回明らかになったように場所によっては、既にかなりひずみがたまっている。「2030年までは安泰」とは決して言えない状況なのだ。

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