自動演奏機械はベートーヴェンの夢をみるか? ~78本の指でギターを弾く「Z-MACHINES」の登場~
自動演奏機械はベートーヴェンの夢をみるか? 機械による音楽演奏の歴史 ~78本の指でギターを弾くロボットバンド「Z-MACHINES」の登場~
・ウェルテ・ミニョン
しかし、19世紀後半から蓄音機・ラジオの時代に栄えた自動演奏機械も現代の機械たちに負けていない。先に掲載した画像のオーケストリオンを製作したウェルテ社が開発し、1904年に発売した自動ピアノ「Welte-Mignon(ウェルテ・ミニョン)」を紹介しよう。この楽器は、演奏家たちの生演奏をロール紙に記録して再生できるところに画期性があった。単なるオルゴールの延長戦上にあった自動演奏機械と違ってウェルテ・ミニョンは、まるでその場に有名な演奏家が現れたかのような迫真の演奏を再現できたのである。
ウェルテ社はこの楽器を売り出すにあたって、当時著名だった作曲家や演奏家たちのピアノ演奏をロール紙に記録して大々的に宣伝した。この企画には、グリークやマーラー、サン=サーンス、ラヴェル、ドビュッシーなど音楽の教科書にも登場する有名な音楽家たちも参加している。このウェルテ・ミニョンによって現在も再生可能な彼らの演奏記録は、当時の蓄音機によって録音された音源などよりもずっと鮮明に彼らのリアルな音楽を伝えてくれる。
「100年以上前の機械にそんなことができるわけが……」と疑いたくなる人もいるだろうが、ウェルテ・ミニョンによる自動演奏の音源はYouTubeでも聴けるので試してみて欲しい(オススメは1905年に記録されたマーラー本人による交響曲第5番の演奏)。今の値段で言うと数億円する機械だった、と聞けば納得のクオリティである。
話は冒頭のZ-MACHINESに戻るようだが、こうした高度な自動演奏技術があれば、人間には演奏不可能な新しい音楽を作ろう、と思う人物も当然ながら出てくる。コンロン・ナンカロウ(Conlon Nancarrow)という作曲家はそのひとりだ。彼は自動ピアノのために「習作」シリーズを50曲以上作曲した。これもYouTubeで「Conlon Nancarrow」で検索すれば聴けるので、実際に聴いていただくのが良いだろう。ジャズやブルースのフレーズが複雑なポリリズムで演奏される様子などの壊れ具合がとても楽しく、自動演奏機械に託した作曲家の夢を感じさせる音楽たちである。
■カエターノ・武野・コインブラ
会社員。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。女子の素直な“ウラの欲望”に迫った本音情報サイト【messy】では「恋愛コンサル男子」を連載中。
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2024.10.02 20:00心霊自動演奏機械はベートーヴェンの夢をみるか? 機械による音楽演奏の歴史 ~78本の指でギターを弾くロボットバンド「Z-MACHINES」の登場~のページです。カエターノ・武野・コインブラ、Z-MACHINES、自動演奏機械などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで