■人を知ることは自分を知ること ― 撮影と恋愛
(C) Antoine d’Agata / Magnum Photos
――肉体関係を持つことが必要ってことですか?
ダガタ 同化するというかね、それに僕はフォトジャーナリストではないしね(笑)。もし僕が報道記者だったら、そういうのはダメかもしれないけど。写真は僕を外界へとつなげてくれるツールにすぎないんだ。犯罪、社会的に落ちた人、そういった人の目撃者になることではなく、もっともっと中から彼らの声を聞きたいんだ。娼婦、ギャング、ジャンキー、同性愛者…世界ではそういう人々が排除されているのが現状。でも、彼らを知りたいという欲望を突き詰めていくと、結局「自分とは何か?」という問いかけの答えを探しているのかもしれない、と思うこともあるんだ。だから自分探しの旅に出ているともいえるんだね。
――それで実際に恋に落ちてしまうことは?
ダガタ もちろんたくさんあるよ(笑)。たくさんね。単純に撮影行為と切り離すことなんてできないさ。問題なのは、僕が旅をしながら写真を撮っているから、移動しなくてはいけないってことさ。家はないからね。
――被写体を探すのはどうやって?
ダガタ 今は、インターネットが普及しているからね、SNSやスカイプを使ってる。それで数週間から数カ月間かけて作品を作ってるんだけど、やっかいなのは、それなりの仲になってしまうから、撮影が終わった後、相手が怒ってしまうことなんだ。「私を利用しているの?」ってね。ちゃんと手紙を書いたりしてフォローはしているつもりなんだけど。エモーショナルな問題は、とっても難しいものだね。友情にしろセックスにしろ、相手も自分も孤独になるのが怖いのかもしれない。