■闇の世界をミックスさせる ― 世界と自分を知る
(C) Antoine d’Agata / Magnum Photos
――時としてダガタさんの写真は、自分にとっての日記のようなものでもあるのですか?
ダガタ そうだね、日記のようなものでもある、全てが自分の人生の断片であるし。だけど、ただの個人的なダイアリーではない、それでは単に自己満足のマスターベーションになってしまうでしょ。『自分という存在は、世界の中の自分である』という認識が大切なんだ。これでもしっかりと自分の立場は理解しているつもりで、社会的な立場ある身としては、コンセプトを持って、写真を通してこの現実を発表しなければならない義務は感じている。アウシュビッツや福島、工場で働く人の写真もあるし、建築写真や田舎にポツリとたたずむ小屋を写したものもある。(写真集を開きながら)これとかね、これもそう。それにしても重い本だね(笑)。それらは全く違うタイプの写真だけど、経済的な問題、移民、薬物、色々なものをどんどんミックスさせていくことで、世界というものを知ることができると思うんだ。僕が興味を持っているのは、世界であり、自分自身なんだ。本当に写真はクールだよ。経済や政治にコントロールされることがない。“写るものは写る”のだからね。
――遺体などを撮ってきた中で、不思議な体験をされたことはありますか? 幽霊を見たとか…。
ダガタ 面白い質問だね。残念ながら本物のゴーストには会ったことはないけど、すごく怖い体験をしたことはあるよ。その時は、頭の中が強烈なフラッシュを浴びたようで、体中が震えて、人々の手足がぐんにゃりと伸びてまるでゴーストみたいだったよ。すごかったね、あれは。