東北被災地で見た幽霊 ― 無人の渋滞、女性の手…霊を鎮めるために建てられた「供養塔」の謎
■無人の渋滞
ほかに、よく聞く話としては、深夜にもかかわらず、渋滞しているとの話だ。これは複数の箇所で聞いている。海沿いの道を車で走っていると、信号もない場所で渋滞をしているという。ある人が渋滞の先頭まで行くと、何もなかった。しかし気になったその人は、先頭の運転手に聞いた。
「どうして止まっているのですか?」
運転手「だって、いつまでたっても横断歩道を人が渡り終えない」
しかしその人には見えない。何を言っているのかと思ったらしいが、他の人も先頭の車を抜こうとは思っていない様子で、止まっていた。横断歩道の向こう側も大渋滞していた。その人からすれば、何も見えないのに、なぜ渋滞するのかが理解できないが、自分だけが見えないのであれば、心霊現象なのかもしれないと思ったようだ。あるいは自分だけがおかしいのか。そもそも、渋滞していた車両自体も、心霊現象なのか、そうでないのかもわからなくなった。
■釜谷トンネルを駆け抜ける無人の車
さて、ここからは震災以前から被災地であった心霊現象の話だ。大津波によって子どもたちの多くが亡くなった宮城県石巻市の大川小学校。その小学校付近から旧雄勝町に行く途中に「釜谷トンネル」がある。このトンネルが釜谷峠という高台にあるため、東日本大震災では多くの人がトンネル付近に避難した。
実は、この「釜谷トンネル」は、以前から女性の霊が出るとの噂があった。震災の取材の過程でこの話を聞いた。Yahoo!トラベルの「旅の知恵袋」というコーナーでも、以下のような質問が投げかけられていた。投稿日は震災の一年前、2010年3月だ。
<宮城県に石巻市雄勝町という、所があります。その、雄勝町には何個かトンネルがあります。それで、よく雄勝のトンネルには、「お化けが出る」と、聞くのですが、どこのトンネルなのですか? トンネルの名前と場所を教えてください?>
この質問に回答者は3カ所を示しているが、そのうちの一つが「釜谷トンネル」だった。
<R398雄勝町から河北町へ向かう釜谷トンネル
河北側出口手前にお婆ちゃんの霊が居るそうで、特に赤い車に反応し見つめるだけで悪さはしないそうです。トンネル開通工事の際多数の死傷者が出たそうです>
私はこの話と似た話を被災者から聞いた。その被災者の話では、「トンネルに入ると、赤い車が前を走っている。スピードが遅いので、トンネル内で追い越しをかけた。追い越すときにふと車を見ると、運転席には誰もいなかった」そして、もう1つ。「トンネル内を走っていると、急に、車のフロントガラスに女性の手が当たってくる」というものだった。
「旅の知恵袋」とは違う話だが、赤い車という話は共通点があった。伝聞によって様々な形に変わっていった可能性はある。
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