渋井哲也のひねくれ社会学

東北被災地で見た幽霊 ― 無人の渋滞、女性の手…霊を鎮めるために建てられた「供養塔」の謎

■供養塔に眠る霊

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 ただ、釜谷トンネルの心霊話は、話だけで終わらない。地域の人たちの多くがその心霊現象を体験したためか、その霊をおさめようという話になったのだ。そのため、トンネルの手前に「有縁 無縁 三界萬霊供養塔」を建てたのだ。「三界」とは欲界(=人間界)、色界、無色界のこと。また、「萬霊」とはあらゆるすべての霊のことで、すべての世界のすべての霊を供養するための塔という意味だ。

 「供養塔」の建立後、「釜谷トンネル」にまつわる心霊現象がなくなった、という。地域の人たちが霊を恐れ、地域の人たちがその霊をおさめようとしたという話はあまり聞いたことがない。「供養塔」の効果があったのかはわからないが、とにかく現在は、「釜谷トンネル」での心霊現象がなくなったという。

 被災地では、私は多くの遺族に話を聞き、あらゆる場所で人が亡くなっていることがわかった。その意味では、どこに霊がいてもおかしくない。また、三陸沿岸部は、『遠野物語』に代表されるように、亡くなった者が登場する民話が多数存在する。「釜谷トンネル」の話も似たようなものだ。こうしたことを考えてみると、東北の人々は、死者とともに地域に根付きながら生き続けていると言っても過言ではない。

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文=渋井哲也

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