【シリア・北大生】重くも軽くもない「私戦予備罪・陰謀罪」とは?
2014年10月、警視庁公安部は北海道大学の男を「私戦予備および陰謀」の容疑で事情聴取すると共に、都内の関係者先の強制捜査を行った。北大生の男は現在休学中で都内の友人宅に寝泊りしており、中東で過激なテロ活動を続けている「イスラム国」へ戦士として加わるために渡航準備中だった。この事件について刑事事件に詳しい、ごとう さときに聞いてみた。
―― 私戦予備および陰謀罪って聞きなれない罪ですね。
刑法93条で「私戦予備罪・陰謀罪」というのが定められています。ただし定められているだけで、実際にこの罪の容疑で警察が動いたのは、史上初かもしれません。
―― そんなに特殊な犯罪なんですか?
憲法9条を守って、70年近く戦争をしていないニッポンにとっては、相当特殊な法律です。具体的な内容は政府が関与しない個人レベルで、外国相手に戦争行為を仕掛ける準備をしたり(私戦予備罪)、戦争を仕掛ける計画を立ててはいけない(私戦陰謀罪)という法律になります。
―― 確かに変わってますね。勝手にする戦争行為を禁止しているわけですね。
いえ、実はこの犯罪のもっとも変っている点は、禁じているのは「準備」と「計画」だけなんです。実際に戦争行為をしてしまった場合は、この罪は適用されません。だって“予備および陰謀罪”ですからね。
戦争に関連した刑法なら、内乱を禁じた刑法77条の《内乱罪》と、その準備や計画を禁じた78条の《内乱予備・陰謀罪》がセットになっています。つまり内乱に関しては“準備・計画”の後、実際に“内乱を実行した罪”も定められているわけです。しかし93条の「私戦予備罪・陰謀罪」はセットになっているべき“私戦罪”というモノは、刑法のどこにも書かれていません。
―― えぇ?じゃあ、実際に私的な戦争を始めちゃったら無罪ですか?
まぁ、刑法93条では罪に問えませんね。日本人の傭兵が犯罪者扱いされないのは、こうした法解釈があるからだとも言われています。リアルに国内で私戦をはじめちゃったヤツがいた場合は、他の現行法、たとえば「器物破損罪」や「傷害罪」、あるいは「銃刀法違反」なんかで裁かれると思いますよ。戦争なんて違法行為のオンパレードですから、適用できる犯罪は山ほどあります。
とはいえ、近代刑法が制定されて、実際に「私戦予備および陰謀」を根拠に警察が動いたのは初めてです。初めてなんで、家宅捜索は強制的に行いましたが、当の北大生は逮捕できずに“任意の事情聴取”だけで終わりそうですね。」
―― 実際に逮捕されると、どんな刑罰になるんですか?
「確か量刑は『3月以上5年以下の禁錮』です。禁錮というのは刑務所にはブチ込まれますが、懲役みたいに労働は強制されません。でも最低刑期の3カ月だって、檻の中で何もすることがない状態が続いたら、拘禁症状が出ておかしくなっちゃいますね。つまり重いんだか軽いんだか、よくわからない量刑です。(※刑務所内では、禁固刑の者は希望すれば労役に参加できる。そして大抵の者は労役を希望する)」
―― あの北大生もそんな罪に問われちゃうんですか?
イスラム国への渡航は防げたし、起訴どころか逮捕もされないと思いますよ。警察署内で説教されて釈放じゃないでしょうか? 今回はイスラム国なんか行くんじゃねぇ! っていう政府のデモ行動でしょう。
―― つまり日本政府による脅しと見せしめというわけですね。
はい。恐らくそうですね。欧米諸国はそのくらいイスラム国の存在にナーバスになってきているわけです。アメリカでは似たような罪でホントに逮捕されたヤツが出ました。そして日本国内でもこれに懲りずにイスラム国を目指すヤツがいたら、今度は警察も本気で逮捕するかもしれません
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