「私は絶対に誘拐されたくない」つぶやく女性/林典子
――誘拐された女性側の家族の反応は?
林 いろいろなケースがあるのですけど、誘拐されたんだから結婚しなさいという親もいれば、絶対に帰って来なさいという親もいます。最終的には本人が決める問題で、女性が拒否すれば、男性は返さなくてはいけず、無理矢理事を進めた場合は罰せられることになっています。とはいえ、見て見ぬふりをされることすらあるのが現実なのですが…。
――無理矢理結婚させられそうになった女性がいたら助けますか?
林 フォトジャーナリストの宿命なのでしょうが、なぜ助けかった? どうして撮ったりするの? と言われることは確かにあります。特に日本はそういうことに敏感な気がしますが、私はジャーナリストである前に1人の人間として被写体に寄り添っていきたいと考えているので、ここまでは撮る、ここからは助ける…と、自分のスタンスは明確に決めていました。
今のキルギスでは、一度男性の家に入ってしまったら、拒否して出てきても、不貞と見なされて家族ごと村八分にされてしまうようなこともあるので、安易な判断は危険です。一時的に救出したとしても、その後に責任を持てるわけではないので、下手なことをすればありがた迷惑なのです。ですから、誘拐された女性が拒否を続けても無理やり結婚させられようとしていたり、レイプをされそうになったら介入しよう、と考えていました。実際に介入したのは取材を通して一回だけです。その際には、警察に通報するなり、状況に明るい都市部の信頼できる人に連絡しますね。タイミングと駆け引きが難しいです。