1967年、モスクワ上空に現れた巨大な「三日月UFO」—— 国家が沈黙した本当の理由

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 1967年の春、モスクワの夕暮れの空に奇妙な光景が現れた。

 それは三日月のような形をした光の欠片で、ある角度からは月と同じくらいの大きさに、またある角度からはそれ以上に巨大に見えたという。この謎の発光体はその年だけで6回も目撃され、決まって夕暮れ時に現れては消えていった。

 当時のソ連の人々は色めき立った。「ついに異星人が来たのか?」と。

 メディアはUFOの可能性を書き立て、国中でUFO愛好家グループが結成され、空を見上げては観測記録をつけるブームが巻き起こった。

 だが、彼らは知らなかった。自分たちが熱心に追跡しているその光が、エイリアンの宇宙船などではなく、アメリカのレーダー網を無力化し、ワシントンD.C.を焼き払うために設計された「3メガトンの核兵器」だったことを。

 今回は、冷戦の狂気が生んだ「死の三日月」と、それをUFOだと信じた人々の数奇な物語を紹介する。

UFOマニアが追跡していた「第1撃」用兵器

 6回目の目撃情報の直後、ソ連のメディアにおけるUFO報道は唐突にピタリと止んだ。

 理由は単純だ。モスクワの軍上層部が、「市民が目撃しているのはトップシークレットの兵器実験そのものだ」と気づいたからである。しかもそれは、核兵器の宇宙配備を禁じる国際条約に抵触する、極めて危うい代物だった。

 その正体は「R-36 Orb」。西側諸国ではSS-9スカルプとして知られる大陸間弾道ミサイル(ICBM)をベースに開発された、極秘の核ミサイルである。

 通常のICBMは北極ごしに最短ルートでアメリカを目指す。しかし、アメリカ側もそれは百も承知で、北に向けた早期警戒レーダー網(BMEWS)をガチガチに固めていた。正面から撃ってもバレるのだ。

 そこでソ連が考え出したのが、このR-36を用いた「FOBS(部分軌道爆撃システム)」という悪魔的な発想だった。

 ミサイルをあえて逆方向の「南」へ向けて発射し、低軌道に乗せて南極上空を通過させる。そして地球をぐるりと回り込み、アメリカの裏庭であるメキシコ方面から侵入させるのだ。当時、南側を監視するレーダー網は手薄だった。まさに「バックドア」からの奇襲攻撃である。

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空に描かれた「死の文字C」

 モスクワ市民が見た美しい「三日月」の正体は、このミサイルの挙動そのものだった。

 実験は、ミサイルが太陽光に照らされ、地上のカメラが影に入る夕暮れ時を狙って行われた。軌道に乗ったR-36が減速用エンジンを噴射し、180度反転して弾頭を大気圏再突入させるためのブレーキ操作を行う。

 この時、噴射された排ガスが夕日を浴びて輝き、夜空に巨大な「C」の文字を描き出したのだ。

 なんとも皮肉な話である。人々が「宇宙からのメッセージか?」とロマンを馳せていた光は、実際にはホワイトハウスやペンタゴン、そして駐機中の米軍爆撃機を不意打ちで消滅させるためのリハーサルだったのである。

精度は悪いが威力でカバーする狂気

 このR-36は、いわゆる「第1撃(ファースト・ストライク)」専用の兵器だった。核戦争の開戦劈頭、敵の指導部を壊滅させ、指揮命令系統を麻痺させるためだけに使われる。

 問題は精度だった。シミュレーションでは、発射されたR-36の半数は目標から半径3マイル(約4.8キロ)以内に着弾するのがやっとだったという。これでは敵の頑丈なミサイルサイロをピンポイントで破壊することはできない。

 しかし、ソ連の解決策は単純かつ暴力的だった。「当たらなければ、威力を上げればいい」。

 搭載される弾頭は最大5メガトン級。広島型原爆の数百倍の威力があれば、数キロ外れようが関係ない。目標周辺を地図ごと消し去ればよいという発想だ。

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画像は「Wikimedia Commons」より

「UFO」の正体がバレた日

 ソ連当局は当初、この発射実験を「科学研究用衛星」だと説明して誤魔化そうとした。しかし、アメリカの情報機関は甘くなかった。

 最初の実験から8ヶ月以内には、米国はこの「衛星」が実際には軌道周回爆撃システムを用いた第1撃用兵器であることを見抜いていた。

 これは当時締結間近だった「宇宙条約」(軌道上への核兵器配備を禁止)や、1963年の国連決議に真っ向から違反する行為だった。

 結局、ソ連はこの兵器の全貌を公式に認めることはなかったが、テュラタム(現在のバイコヌール)近郊のサイロに18基のR-36が配備されていたことがわかっている。

 その後、アメリカが南向きの早期警戒レーダーを配備したことや、より迅速に攻撃可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の台頭により、R-36は戦略的価値を失い、SALT II(第二次戦略兵器制限交渉)によって禁止された。

 モスクワの空に浮かんだミステリアスな三日月。それは未知との遭遇への希望ではなく、人類滅亡へのカウントダウンを表示するモニターの輝きだったのかもしれない。

参考:Popular Mechanics、ほか

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