『未知との遭遇』は陰謀スリラーだった!? スピルバーグ最新作『ディスクロージャー・デイ』と政府のUFO隠蔽工作のリアル

夕食のテーブルでマッシュポテトをこねて巨大な岩山の形を作り出す男——この奇妙なワンシーンが記憶のどこかに引っかかっている人は多いのではないだろうか。スティーヴン・スピルバーグ監督の1977年の名作『未知との遭遇』の一場面だ。多くの人は「宇宙人と心を通わせる感動作」として覚えているはず。ところが半世紀近くを経た2026年に観返すと、本当の主役は宇宙人ではなく「真実を隠そうとする政府」だったことに気づかされる。スピルバーグ自身、この作品を構想した当初は「UFOとウォーターゲート」と呼んでいたという。
マッシュポテト、偽の事故、麻酔で眠る動物たち——巧妙すぎる隠蔽工作
主人公ロイ・ニアリーは、ごく普通の家庭人。ある夜にUFOを目撃して以来、頭から離れない「ある形」に取り憑かれていく。それが、夕食の皿にマッシュポテトで再現してしまう岩山だ。後にそこがUFOの着陸地点——ワイオミング州に実在する奇岩「デビルスタワー」だと判明する。

ここからがこの映画の薄気味悪いところだ。テレビのニュースは、列車事故で化学物質が漏れたとして周辺の半径約483キロを避難させると報じる。だが観客は裏側を知っている。これは作り話で、本当は軍が着陸地点を準備するため住民を遠ざける口実なのだ。
避難区域へ機材を運ぶトラックにはアイスクリームチェーンやスーパーのロゴが描かれ、極秘の軍事作戦が街角のおなじみの看板でカモフラージュされている。極めつけは道端に転がる動物たちの死体。これも作り話に信憑性を持たせるため政府が麻酔で眠らせただけだった。
スーパーへ向かうはずのトラックが宇宙人の着陸準備に使われているなら、いったい何を信じればいいのか。これはもう感動の宇宙人映画ではなく、巨大な国家の嘘に立ち向かう一市民の陰謀スリラーなのだ。
『E.T.』も同じ穴のムジナ、そして現実が映画に追いついた
「それは深読みしすぎでは?」と思うかもしれない。ところがスピルバーグは続く『E.T.』(1982年)でも同じテーマを仕込んでいる。少年エリオットが匿う宇宙人E.T.を、政府機関が研究のために奪い取ろうと押し寄せる。終盤、自転車が空を舞うあの名シーンで子どもたちが必死に逃げる相手は、ほかでもない政府の車なのだ。
そして恐ろしいことに、現実のほうが映画を後追いしてきた。UFO目撃をめぐる政府の極秘調査は1947年のロズウェル事件にさかのぼるとされるが、その一端が公になったのは2017年のこと。米国防総省が目撃事案を密かに資金提供して調べていたと報じられ、「政府は本当に何かを隠していた」ことが明るみに出た。ある研究書によれば、『未知との遭遇』の公開後にはUFO目撃報告が急増したという。しかもその多くは新たな事案ではなく、これまで名乗り出るのが怖かった人々が過去の体験をようやく打ち明けたものだったというから興味深い。

巨匠の新作『ディスクロージャー・デイ』と、煮え切らない”情報公開”
スピルバーグはこのテーマに、今まさに正面から斬り込もうとしている。新作『ディスクロージャー・デイ』だ。予告編で宇宙人の登場が示唆されると、ネットは「『未知との遭遇』の続編か!?」と大盛り上がり。あまりの過熱ぶりに、公式資料がわざわざ「続編ではありません(ごめんね、インターネット)」とお茶目に否定したほどだった。
主人公ダニエルは、国防総省と裏でつながる非公式の謎の機関に勤める内部告発者。数十年分の宇宙人来訪の証拠を握る政府の闇を暴こうとして、追っ手から逃げる羽目になる。ウォーターゲート以後の空気が色濃く漂う一本だ。スピルバーグ自身、もし誰かが「我々はひとりではない」と知っているなら、なぜそれを教えてくれないのか、と問いかけている。
現実の歩みは相変わらず煮え切らない。2023年の米議会公聴会は目立った成果なく終わり、ペンタゴンが先月公開した映像の多くも結局何なのかわからないものばかりだ。半世紀前、スピルバーグは偽の事故で「政府は真実を隠している」と囁いた。その囁きは、UFOがUAPと呼び名を変えた今もスクリーンの中でこだまし続けている。真相が地球外生命の存在なのか、それとも我々の「信じたい」という願望そのものなのか——答えはまだ、デビルスタワーの向こうの夜空に浮かんだままなのかもしれない。
参考:BBC Culture、ほか
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