CIA史上“最も大胆な水中強奪劇”。深海5000メートルからソ連の核ミサイル搭載艦を盗み出した「プロジェクト・アゾリアン」

1974年、アメリカの深海採掘船「ヒューズ・グローマー・エクスプローラー」号が世間の注目を集めていた。風変わりな億万長者ハワード・ヒューズが考案したとされる全長約189メートルの巨大船は、マンガン団塊を採掘するという名目で建造された。しかし、その真の目的は誰も想像し得ないものだった。
実はこの船は、CIAの極秘ミッション「プロジェクト・アゾリアン(Project Azorian)」のために作られたものだったのだ(長らく「プロジェクト・ジェニファー」という誤った名称でも知られていた)。
その任務とは、太平洋の水深約5000メートルに沈むソビエト連邦の原子力潜水艦K-129を引き上げること。そこには核ミサイルや冷戦時代の極秘情報が眠っていると推測されていた。
巧妙なカバーストーリーと技術的な偉業

1968年に沈没したK-129の正確な位置を特定した米国は、それを極秘裏に回収するため、6年もの歳月をかけて準備を進めた。ヒューズという著名人を利用して「深海採掘」という完璧なカバーストーリーを作り上げ、世間の目を欺いたのだ。国際スパイ博物館の学芸員アンドリュー・ハモンド氏は、「これほど大規模な作戦、船、そしてハワード・ヒューズを使った隠蔽工作のディテールは信じがたいレベルだ」と語る。
1974年7月4日、グローマー号は現場海域に到着した。船底の「ムーンプール」と呼ばれる開閉式のドックから巨大な捕獲用アーム(通称クレメンタイン)を降ろし、海底の潜水艦を掴み上げるという前代未聞の作戦が開始された。
現場は極度の緊張状態にあった。ソ連の船が監視のために接近し、時には約180メートルまで迫ることもあった。ソ連のヘリコプターが着艦しようとするのを防ぐため、グローマー号の乗組員は甲板に箱を積み上げるなどの対策を講じた。もしソ連軍が乗り込んできた場合は、機密資料を緊急破壊する準備までしていたという。

作戦の結末と漏洩した秘密
計画は順調に進んでいたかに見えたが、引き上げの途中で悲劇が起きた。水深約2700メートル付近で潜水艦が折れ、大部分が再び海底へと落下してしまったのだ。それでも乗組員は諦めず、残った前部約30メートルを回収することに成功した。回収された船体の一部には、6名のソ連乗組員の遺体が含まれており、彼らは米軍による水葬で丁重に弔われた。
CIAは残りの部分を回収する計画を立てたが、予期せぬ事態が起こる。ヒューズの事務所に泥棒が入り、機密文書が盗まれたことで、グローマー号とCIAの関係が露見してしまったのだ。1975年2月にロサンゼルス・タイムズがこれを報じると、作戦の全貌が明るみに出て、さらなる回収は断念せざるを得なくなった。

グローマー号のその後と遺産
完全な成功とは言えなかったが、CIAはこの作戦を「冷戦期における最大の諜報クーデターの一つ」と評価している。そして、この事件をきっかけに、政府機関が肯定も否定もしない際の決まり文句「確認も否定もできない(can neither confirm nor deny)」が生まれたのである。
数奇な運命を辿ったグローマー号は、その後石油掘削船として改修され、実際に深海掘削の分野で活躍した後、2015年に解体された。しかし、その甲板の一部は現在もスパイ博物館に保存されており、冷戦の海の下で繰り広げられた大胆不敵なドラマを今に伝えている。冷戦の闇に葬られたはずの物語は、今も博物館の片隅で、静かにその真実を語り続けているのだ。
参考:Popular Mechanics、ほか
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2024.10.02 20:00心霊CIA史上“最も大胆な水中強奪劇”。深海5000メートルからソ連の核ミサイル搭載艦を盗み出した「プロジェクト・アゾリアン」のページです。CIA、ソ連、原子力潜水艦、極秘プロジェクトなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで