CIA本部に眠る“世界一有名な未解読暗号”「クリプトス」― 35年の時を経て暴かれた“意外すぎる真相”

アメリカ中央情報局(CIA)の本部、その中庭に、35年間もの間、世界最高峰の頭脳たちを悩ませ続けてきた一つの暗号がある。彫刻家ジム・サンボーンによって制作されたアート作品「クリプトス」。その銅版に刻まれた4つの暗号のうち、最後の「K4」と呼ばれる部分は、誰にも解読されることなく、“世界で最も有名な未解読暗号”として君臨してきた。しかし今、この長きにわたる謎が、あまりにも意外な形で、解き明かされようとしている。
CIAからの挑戦状―彫刻に隠された4つの暗号
1990年、バージニア州ラングレーにあるCIA本部に設置された「クリプトス」。それは、S字型に湾曲した巨大な銅板に、何百ものアルファベットがランダムに刻み込まれた、ミステリアスな彫刻だ。
しかし、これは単なるアート作品ではない。この文字の羅列の中には、異なる暗号方式でスクランブルされた、4つのメッセージが隠されているのだ。設置以来、世界中の暗号解読者やCIA職員、そして好事家たちが、この謎に挑んできた。
最初の3つのメッセージ(K1、K2、K3)は、比較的早い段階で解読された。しかし、最後の97文字からなる「K4」だけは、35年もの間、誰にもその意味を解き明かすことができなかったのだ。
暗号解読ではなく、“書類整理”のミスで発見された「答え」
K4の謎は永遠に解かれないのか―。そう思われていた矢先、事態は劇的な、そして少しだけ拍子抜けな形で動く。
制作者であるジム・サンボーンが、K4の解読方法の権利をオークションにかける準備を進めていた、まさにその時だった。二人のジャーナリスト、ジャレット・コベックとリチャード・バーンが、スミソニアン博物館のアメリカ美術公文書館で、偶然にもK4に関する資料を発見してしまったのだ。乱雑に保管されていた膨大な書類の山の中から、彼らはついに、K4の「平文(plaintext)」、つまり暗号化される前の“答え”そのものを見つけ出してしまったのである。
「これは、決して暗号学的な解読ではない」と、コベック氏は語る。スーパーコンピュータやAIでさえ解けなかった謎が、高度な数学や暗号解読技術ではなく、ずさんな“書類整理のミス”によって暴かれてしまったのだ。

謎は本当に解かれたのか?―封印された「答え」と、残された「解き方」
この世紀の大発見(?)を受け、スミソニアン博物館は、サンボーンの知的財産を守るためとして、関連資料を2075年まで封印することを決定。発見した二人のジャーナリストも、オークション会社からの法的措置の警告を受け、「答え」を公表する意思はないと表明している。
では、これでクリプトスの謎は、本当の意味で解かれたと言えるのだろうか。世界のクリプトス研究家たちは、「ノー」と断言する。
「彼らは“答え”を知ったかもしれない。しかし、“解き方”を知らないのなら、それは解読したことにはならない」
ジャーナリストたちが見つけたのは、あくまで暗号化される前の「平文」だ。サンボーンがどのような複雑な思考と手法を用いて、その平文をK4の97文字に変換したのか、その“プロセス”は依然として謎のままだ。さらに、サンボーン自身が示唆している、K4を解読した者だけが挑戦できる、最後の謎「K5」の存在もある。
CIAの庭に佇む謎の彫刻。その核心部分は、今もなお厚い秘密のベールに包まれている。暗号解読の天才たちが挑み続けてきたこの壮大なパズルは、思いがけない形で一つの区切りを迎えた。しかし、その本当の謎は、まだ始まったばかりなのかもしれない。
参考:IFLScience、ほか
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2024.10.02 20:00心霊CIA本部に眠る“世界一有名な未解読暗号”「クリプトス」― 35年の時を経て暴かれた“意外すぎる真相”のページです。CIA、暗号、クリプトスなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで