ラピュタの飛行石か? 今は無き日本の秘境「暗黒のトンネルで青く光る石」が美しすぎた…!

 ここで採掘されていたタングステン鉱石は「灰重石(かいじゅうせき)」という鉱物だ。灰重石はタングステンという金属とカルシウム、酸素から成る鉱物(CaWO4)で、手に取るとずっしりとくる重い鉱物だ。蛍光灯や日光の下では、灰重石は肌色をしているが、紫外線を照射すると紫外線の高いエネルギーを青い「蛍光」という光に変えるふしぎな性質をもっている。

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 タングステンというのは聞きなれない金属だが、意外にも身近にある。たとえば熱に強い性質(融点3410℃)を利用して電球のフィラメントに使われている。また非常に硬い性質は、炭素と化合したタングステンカーバイドになるとさらに硬さを増し、鉄などの金属を削る超硬切削工具の原料としても使われている。鉄やアルミがまるでチーズのようにするすると削れてしまうくらい硬い金属だ。

 戦車の装甲板や砲弾の先端、医療の現場では放射線の防護板にも使われているそうだ。

 タングステンはとにかく重い。一辺1cmのサイコロにしたときの重さを密度というが、水は1g/cm3、鉄は7.86 g/cm3、そしてタングステンはなんと19.3 g/cm3と純金並に重い。

 灰重石は石英(白い鉱物で、自形の結晶は「水晶」という)の帯状の脈を中心にできている。喜和田鉱山があるあたりはもともと浅い海のサンゴ礁からできた石灰岩だった。石灰岩はカルシウムを含んでいる。山口県の名所・秋芳洞を形成している岩石もこの石灰岩だ。1億年ほど前、地下深いところからマグマが上がってきた。マグマから割れ目を伝って熱水が地表へ上昇すると石灰岩の中の割れ目にも入ってきた。そのときに石灰岩の中のカルシウムと熱水の中のタングステンの成分とが反応して灰重石が作られた。

 喜和田鉱山は2008年に閉山され、ラピュタの世界はもう見ることはできない。暗黒の坑道で石たちは再び深い眠りについたことだろう。

■山本 睦徳(やまもとむつのり)
ドキュメンタリー作家。地球科学のドキュメンタリー映画製作、記事を執筆。面白くて楽しく読める文章で読者を地球科学の世界へ誘う。http://www.earthscience.jp

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