「日の丸は狙撃の目印」日系カナダ人に聞いた、日系人差別と強制収容所の実態! 〜妻夫木主演『バンクーバーの朝日』〜

 バンクーバー在住、日系二世の女性に話を聞いた。

「戦前、私の父は大阪からバンクーバーに移住しました。仕事は肉体労働などを生業としていたそうですが、当時の日系人はカナダ人の差別を受けながらも一生懸命に働いていたと聞きます。そして、日本人街のコミュニティーでは、日系人同士の繋がりがとても深く、色々な人達の助けによってて父は所帯を持つまでになりました。しかし、幸せな生活も束の間。太平洋戦争が始まると、アメリカ・イギリス主導の連合国側についたカナダは、日本を敵国とみなし、カナダに住む日系人全員を強制収容所に送りました。冬の強制収容所は氷が張る程の寒さにもかかわらず、住まいとして用意された場所はほったて小屋や馬小屋という劣悪な環境で、多くの人々が亡くなりました。また、日系人は捕虜の印としてハッピのようなものを着ることを義務づけられましたが、そのハッピの背中には赤色の日の丸が描かれていました。これは見張りの門番が銃で狙撃するための目印だったそうです」

 そればかりでなく、カナダ人の一員として生活してきたのに日系人家財を没収された挙げ句、強制収容に連行された彼らは「自分たちは一体、何者なのか?」という精神的なダメージを負ったという。

 戦後は、このような生活から解放され、日系人は全面的に市民権を獲得。カナダ国内を自由に移動できるようになった。しかし、没収された家財が返還されることはなく、カナダ政府が戦中に日系人を強制収容したことを正式に謝罪したのは、強制収容が行われてから実に47年を経過してからのことである。収容所体験者には、2万1000カナダドル(約217万円)を補償。さらに日系社会全体への社会・教育・文化のために拠金したのだった。

 現在、バンクーバーは治安や生活が安定していることから、「世界で住みたい都市」のランキング上位に選ばれる。人種差別もほとんどなく、むしろ日本人というだけで好感を得ることが多々あり、日系人にとって非常に暮らしやすい街となった。これらの背景には映画『バンクーバーの朝日』で描かれたように、日系人が不当な扱いや貧困の中を、必死に生き抜いたという歴史があったことを忘れてはならない。

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