『私が愛する7本の映画』~私の内なる狂気と無垢を可視化した映画たち~ 田中幸夫(映画監督)
2015.01.25 12:00
『浮雲』(1955年) 監督:成瀬巳喜男
虚構と現実の狭間に咲く映画もあれば、現実を見据えてたじろがない映画もある。男にとっても女にとっても、『浮雲』はひたすら辛く苦い痛切な映画である。しかし、あらゆるマイナスの札を集めて悲哀を逆説的な愉楽に変えることも出来るのが人間かもしれない。脳化、唯幻論……。全てを含んで人間の現実がある。私が2年前から神戸で撮影中の映画『合縁奇縁』は、知命を過ぎた北の女と南の男が色街で出会い、同居別居を経て、人生の黄昏を打算も含めて探り合う可笑しみ溢れるドキュメンタリー映画である。完成の時期はまだ見えない。
画像は『ベニスに死す』
(ワーナー・ホーム・ビデオ)
(ワーナー・ホーム・ビデオ)
『ベニスに死す』(1971年) 監督:ルキノ・ビスコンティ
美に魅入られた人間が堕ちて行く艶かしい地獄めぐり。先達は悪魔ではなく堕天使と決まっている。マーラーの“交響曲第5番”が官能を震わす。私の中で何も考えず酔うに任せていい唯一の映画。
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