【イスラム国事件】なぜ湯川さんと後藤さんの2人は殺されなければならなかったか? アメリカを意識しすぎた日本の誤算とは?

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 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」により、湯川遥奈さんと後藤健二さん2人の日本人男性の命が奪われた。

 そもそも、湯川さんが拘束されたとニュースになったのは昨年の8月のこと。後藤さんも11月にはISに拘束されていたと報じられている。ISはこの時期になってなぜ、拘束中の日本人2人を表に出したのか。政府系シンクタンク研究員のAさんは、「安倍首相の中東歴訪がトリガーになった」と語る。

「ISがここに来て2人を“登場”させた直接の原因は、安倍首相の中東歴訪、特にイスラエルでのネタニヤフ首相との会談と『イスラム国』周辺国への資金援助表明です。

 安倍首相は、ISにとって不倶戴天の敵であるイスラエルで『六芒星旗』を背にして会見を行い、ヨルダンでは『イスラム国と戦う周辺国に、総額で2億ドル程度支援する』と発言しました。日本政府の意図は、あくまでも中東の安定における非軍事の貢献と人道支援ですが、ISは日本の“宣戦布告”と捉えたでしょうね」

 確かに、ISは映像の中で「日本は十字軍に参加した」「イスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな選択をした」と、日本を強く批判している。

「ISの目的ははなから身代金ではなかったんですよ。身代金2億ドルというのは日本政府が“イスラム国と戦う周辺国”に支出すると表明した額と同額です。つまり、あくまで日本への当て付けだったんですよ。その証拠に、今はヨルダンに拘束中の死刑囚の釈放を求めてますよね。

 ISの目的は、『これまで中東問題から距離を置いてきた日本までもがアメリカと歩調を合わせて介入してきた。世界中のムスリムは団結して立ち向かわなければない!』とアピールして、人とカネを集めることです。つまり、ISは安倍首相の中東歴訪を、ほころびが出始めた組織の引き締めに利用したのです」(同)

■イスラム帝国復興を目指して人気を得た「イスラム国」

 そもそも「イスラム国」とは、一体どのようなものだろうか。日本が今後歩む道、海外での日本人の安全にも大きな影響を与えるため、改めて、簡単に説明したい。

 イスラム国を一言で表すなら、アメリカのイラク統治失敗の落とし子だ。シリアとイラクの一部を支配する勢力で、イスラム国と呼ばれるように「国」を自認しているものの、主要国や周辺国から国家承認はされてない。

 しばしば「国際テロ組織」と表現されるが、それは誤認だ。フセイン政権で統治機構を担った軍人、公務員が中心となって組織を運営しており、国家ではないが、極めて国家に近い形態の勢力、というのが正しい見方だろう。

 目標は、イスラム法に基づく“国家”の建設。主張する領土は、中東からスペイン、北アフリカ、中国の一部にまで及ぶ。

 つまり、イスラム国は、第二次大戦後に米英が“押し付けた秩序”を破壊して、イスラム帝国の再興を目指しているのである。

 このため、世界各国のイスラム教徒の若者、特に移民の子として貧困に喘ぐ層に人気がある。彼らにとって、イスラム国とは夢を与える存在なのだ。そんなイスラム国の現状について、Aさんはこう続ける。

「海外からの戦闘員募集で勢力を広げてきたISですが、ここに来て、勢力拡大に陰りが見えてます。外国人戦闘員に高額の給与を支給できない、逃亡防止のためにパスポートを没収する、ひどい場合には外国人戦闘員に家族ともども参加させ、家族を人質にとっているという状況です」

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