【日本怪事件】テレビのシーンをそのまま犯行で利用? 不条理な誘拐事件

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■あえなく逮捕

 22日、フィリピンのマニラ国際空港で入国拒否された男性がいた。行方不明になったはずの、後藤浩之(当時、38)。松井さんを殺害したのが、後藤だった。強制送還されると、成田空港で逮捕された。

 後藤はJC会員で仕出し弁当の会社の経営者だった。朝5時には出勤、従業員と一緒に弁当を作り、配送や空き箱の回収を分担し、夜は帳簿を付けるという、働き者だった。だが、しだいに競艇や風俗遊びにのめり込むようになる。最後にはまっていたのは、フィリピンパブだった。若いフィリピーナに入れあげて、毎日のように通っていた。それで会社の金を使い込んだが、それでは足りずにカードローンは300万円まで膨れあがり、JCの仲間からも金を借りた。松井さんからも金を借りていたのだ。

 殺害の場面は、後藤と検察で主張が異なる。

「4月17日のJCの会議後、松井さんに呼び止められた」というのが、後藤の言い分だ。後藤の車の後部座席に並んで座ると、松井さんは借金の返済を求めた。

「なんだ、フィリピン女のケツばかり追いかけて。そもそも、弁当屋にはJCに入る資格がない」

 その松井さんの言葉に激高して、後藤は彼の首を絞め殺害したという。その後、遺体を空き家となっている元旅館に隠し、夜になって山林に投棄した。殺してしまってから、この際だから身代金を取ろうと思いついた、というわけだ。

 それに対し、後藤のほうが松井さんを呼び止めて車に入れたのであり、身代金奪取を狙った計画的な犯行だった、というのが検察の主張だ。

 計画的犯行のほうが刑が重くなるわけだが、犯行全体の行き当たりばったりさを見ると、後藤本人の言い分のほうがむしろ事実なのではないかとも思える。

 後藤がフィリピンに向かったのは、入れあげていたフィリピン女性が帰国していたからだ。彼女は後藤から結婚を申し込まれていたが、事件とは無関係だと主張した。身代金目的誘拐の殺人として、検察は死刑を求刑した。だが、一審も控訴審も判決は無期懲役だった。

 平成18年12月15日、名古屋高裁での判決言い渡しで、門野博裁判長は述べた。

「凶悪な犯行で刑事責任は極めて重大だが、周到な計画に基づくものではなく、極刑にはちゅうちょを覚える」

「殺害行為はたまたま条件が整ったため。強固な意志があったとは断定できない」

 白昼の駐車場で殺害するなど、とても計画性があったとは思えない、というわけだ。裁判長もやはり、行き当たりばったりの犯行と認めたわけである。一時的な感情で殺人にまで手を染め、あわてて杜撰な身代金誘拐計画を企てた犯人…、なんともやりきれない事件である。
(文=深笛義也)

■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか? 革命か? それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ

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