喜んでいる場合ではない!! 中国重視のドイツ・メルケル首相が日本に来た本当の理由とは?

喜んでいる場合ではない!! 中国重視のドイツ・メルケル首相が日本に来た本当の理由の画像1メルケル首相/Wikipediaより

 私は、ルドルフ・グライナーです。日本と世界を研究するドイツ人です。私は、日本と世界の違いやドイツと日本の違いを研究しています。

 今年3月にドイツのメルケル首相が日本に訪問しました。メルケル首相は、ポーランド人のルドヴィク・カズミェルチャクがドイツに徴兵され、そのまま戦後ベルリンに移住した家系に生まれています。その後、父ホルストはベルリン=ブランデンブルク福音主義教会の牧師として東ドイツに移住。

 当時、東ドイツでは教会は反政府勢力の拠点とされていましたが、ホルストの教会は「進歩的勢力」と見られており、東ドイツの政府(共産主義)から危険視されていませんでした。

 その後メルケルは物理学者となり、平行してドイツ社会主義統一党(SED)の下部組織である自由ドイツ青年団(FDJ)に属して政治活動も行いました。物理学の教授を務めている間に、西ドイツも旅行しています。これは「国家に忠実とみなされた者にのみに許される権利」だったようです。

 要するにメルケル首相は、東ドイツに属していた時期に東側の政府に忠実であったということになります。

 1989年のベルリンの壁崩壊後、メルケルは科学アカデミーを辞め、政治活動を行うようになります。そして、ヤミ献金問題でキリスト教民主同盟(CDU)党首ショイブレが辞任したことで、2000年にメルケルがCDUの党首となったのです。

 日本ではどのように言われているかわかりませんが、メルケル首相は、もともとは旧東側諸国の優等生で、突然CDUの党首になってからは、急激に民主主義者、そして保守主義者の政治家として注目されるようになりました。これはメルケル首相本人が、これまでの主義を変えたとかではありません。彼女はもともと理数系の人物で政治を中心に学んだ人物ではないため、根本的なイデオロギーを理解しないうちに、政治の世界に来てしまった感があるのです。

  もそも「社会主義」「全体主義」と「ドイツ国内における保守主義」というのは、そんなに大きな違いはありません。あのナチスの正式名称は、「国家社会主義ドイツ労働者党」であって、現在の日本の感覚でいえば、保守ではなく、社会主義政党なのです。

 日本人はそのあたりの概念を分かっていない人が多く「ナチス=日本でいう保守」と考える人が少なくありませんが、ナチスは一概に保守とは言えないのです。

 さて、メルケル首相は、自分の政治的知識や政治基盤が弱かったことから、1960年代からドイツ国内にある「ネオナチズム」集団を取り込むようになります。この「ネオナチズム」は、極端なナショナリズムで、外国人排外を主張している集団です。メルケル首相はCDUの当主として「民主主義者」と「ネオナチズム」の指示を受けることによって大きくなっていったのです。

 つまり、メルケル首相は「ナショナリスト」であり「異文化排除の社会主義者」であるというようなことになります。本人も「『さあ、多文化社会を推進し、共存、共栄しよう』と唱えるやり方は、完全に失敗した」と2010年に発言し、一つの国家に多くの文化が入ることを否定しています。また、そのイデオロギーに関しても「私は時にリベラル、時に保守、時にキリスト教社会主義です。それこそがCDUをなしているのです」と2009年にテレビで発言しているのです。

 さて、メルケル首相は2012年にドイツを訪問した温家宝首相(当時)と意気投合し、経済的な提携を行うようになってきました。ドイツは、自動車・化学・機械・電子・電気器具の投資などで20近くの中国との間の経済協力を締結し、契約総額は150億ドルを超えました。このことからもわかるように、ドイツは中国と大接近しております。そして、最近では「国家社会主義」を共通項として、アメリカとの関係を徐々に薄めて、中国との関係を深めているのです。

 それでアメリカのCIAはメルケル首相を「重要監視対象」として、個人の携帯電話の盗聴などを行っていたのです。このことはニュースでも話題になりましたね。実際に、メルケル首相の「保守」とは、現実的には「国家社会主義」であって、必ずしも民主主義でもないし、また「ナショナリズム」であって「グローバリズム」とは全く異なるということになります。そのためにアメリカとは利害が一致しません。

 ドイツはメルケル首相になってから、徐々にアメリカ、そして西側諸国と離れて行くことになり、そして、ロシアは特種ですが、中国などの社会主義国と近くなってきたのです。

 このような前提がある中で、今回の来日ということになります。なぜ、そもそもこの時期にメルケル首相は日本に来たのでしょうか?

 今年は第二次世界大戦終戦の70周年です。そのため、世界各国でさまざまなイベントが行われます。しかし、それらのイベントは純粋に戦争が終わったことや、現在の平和を祝うためのものではありません。実際に行われる内容は「現在の政治状況」における各国の主導権争いです。

 そして、その中心は国連です。国連は、戦後に戦争を起こさないために「連合国側」という戦勝国に酔って作られた連合体です。そのため、戦争で最後まで反抗したドイツと日本は、今でも「敵国条項」の中に入っています。事実上死文化したといわれる「敵国条項」ではありますが、影響はゼロではありません。ドイツ人の中には、いつまでたっても「敵国条項」として、アメリカの主導下としていなければならないことに否定的な人もいます。

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