喜んでいる場合ではない!! 中国重視のドイツ・メルケル首相が日本に来た本当の理由とは?

■ナチスドイツと中国

 さて、ナチスドイツと中華民国は非常に関係が良かったといわれています。1910年代から1940年代にかけての中華民国とドイツの一連の軍事的・経済的協力関係が深く、これを Chinesisch-Deutsche Kooperation(日本語では中独合作と訳す)といいます。実は、ナチスドイツは、日華事変、日中戦争、そして満州事変…と、中国と戦ってきた日本と「日独防共協定」そして「日独伊三国同盟」を持ちながらも、蒋介石の中華民国に対して武器の援助や軍隊の訓練、場合によっては軍隊の指揮や参謀本部への助言を行っていたのです。ナチスは、片方で日本と同盟を組みながら、片方で中国と関係を持って日本と戦っていたことになります。

 2012年、温家宝首相はドイツを来訪した時にそのことを持ちだしたといいます。

「アメリカとNATOで協力しながら、再度現代の中独合作を行おう」ということを持ちかけ、また「思想的にも国家社会主義を標榜し、なおかつアメリカグローバル主義を否定する立場で、同じである」として、協同を持ちかけたのです。そして、その先駆けとして「日本の保守化、右傾化、ファシズムを中止させる」ことを目的としたといわれています。


■中国に擦り寄るドイツ

 さて、中国と「現代版中独合作」を進めるメルケル首相は、日本に対して、「中国との和解」を求めに行ったのです。まさに、それは表向きには「現在、元の連合国と対立し、ファシズムに走っている日本を治めに行く」ということですが、その実は、アメリカとも微妙なバランスを保ち、また、中国とも連携し、ドイツだけ「敵国条項から外れる」ことを目指して行ったのです。現在日本は、再度保守的になっているのに対して、ドイツは「社会主義化」してきているという現状で、それをうまく利用してドイツの国益のために動いているのです。

 さて、日本に対してメルケル首相が言ったことはウクライナ問題、そして、東アジア情勢について「アドバイスする立場にない」と前置きしたうえで、「(ナチスドイツの)過去の総括は和解の前提になっている。和解の仕事があったからこそ、EU(欧州連合)をつくることができた」と述べ、中国と仲良くすること、単純に言えば中国の要求を呑むように促したのです。

 そのうえメルケル首相が来日中に会談した相手は、民主党の岡田代表や朝日新聞であったと聞きました。そして「独仏の和解はフランスの寛容な振る舞いがなかったら、可能ではなかった」ということを言い、暗に中国の「寛大なふるまい」を期待するように言ったのです。

 これは、まさにドイツ政府であるメルケル首相が中国政府とかなり仲良くなっているということですし、また、そうして「中国側陣営」を増やそうとしていることになります。もし失敗しても、その場合は日本が中国に反発したことになるので、中国は反日運動が大きくなり、なおかつ、現在、ドイツは中国に対して媚を売っているのですから、中国の市場や権益をアメリカではなくドイツが席巻することができると考えているのです。

 日本は「中国の意向に乗って動かされているドイツのメルケル首相」に会ったということではないでしょうか。そのためには、「戦後70年の安倍談話」が検討される今しかないということになったのです。ですから「安倍内閣に反対する勢力」に多く会いに行ったということになります。

 日本は、古いイメージで外国のことを評価してしまいます。私が今回書いたようなことを、日本人はあまり理解しようとしません。冷静に、国際関係を見ましょう。中国が裏でどのようにに動いているかよく見てみましょう。そして日本がどれほど動いていないかをよく知るべきではないでしょうか。
(文=ルドルフ・グライナー)

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