鹿児島で大噴火の次は富士山噴火か? ~噴火で起きる首都圏パニック~
火山灰は2㎜以下の微細な火山岩の粒子で、刺激性の酸性膜で覆われている。ただの灰よりも刺激が高く、気道を収縮させることでせきや鼻水、息苦しさを引き起こす。特に慢性肺疾患やぜんそくの患者には影響が大きく、それまでぜんそくの症状がなかった人が降灰を吸い込んだ結果、ぜんそくを発症する例も少なくない。
1990年の雲仙普賢岳の噴火では、島原市市民の約66%が健康面への影響を受けた。うち眼の痛み約8割、喉の異常が約6割だったという。富士山が噴火した場合、1,250万人に健康障害が起きると考えられる。
健康被害以上に恐ろしいのは交通網の停滞と生活インフラへの影響だ。雪が降っただけでパニックになる首都圏に火山灰が降る。降灰が1日5センチ以上では除灰が不可能になり、10センチで自動車の車軸まで灰に埋まってしまう。そうなると道路は完全に通行不能になる。約70,000kmの道路が視界不良で徐行を余儀なくされ、約3,700~14,600kmが通行止めになる。
飛行機も欠航、鉄道もダイヤルの乱れが深刻になるだろう。『富士山噴火の社会的影響:火山灰被害の影響についての企業・行政調査』によると、線路に灰が積もった場合、灰が車輪とレールの絶縁体となるのだという。その場合、信号システム・踏切などが動作しない可能性がある。また鉄道の場合、屋外に運行制御システムに連動したセンサを設置している。火山灰の影響でこうしたシステムがクラッシュ、運行が止まる可能性が高い。
雪と違って火山灰は溶けない。溶けない灰が直撃するのが上水道だ。下水への影響はほとんどないと考えられているが、上水道には深刻な影響が出る。浄水場の浄化能力を上回り、約190万~230万人の飲み水が不足する。火山灰が降りつもった後に雨が降ると、ずっしりと重くなった火山灰によって、電線が切断する危険性がある。また火山灰は濡れると導電性を持つため、碍子に付着する灰から漏電が起き、停電が起きる。桜島の噴火では、1cm 以上の降灰がある範囲で停電が起こり、その被害率は18%だという。富士山に近く、灰が厚く積もった場所では屋根が落ちたり、家屋が倒壊するかもしれない。
コンピュータは室内に設置され、光ファイバーも地中にあるため、影響は大きくない。ただし火山灰が基盤に入り込み、腐食する可能性はあるらしい。
農業は非常に深刻な影響を受ける。露地栽培はほぼ壊滅、火山灰により土が酸性化し、1年間は農作物が育たなくなる。米なども灰が付着して商品価値がなくなる。
内閣府の「第3回広域的な火山防災対策に係る検討会」によれば、1センチの降灰は東京都全土で1,782万立方メートル(10トンダンプ205万台)にも及ぶ。富士山宝永噴火(1707年)と同レベルでは、10トンダンプ延べ約2,250万台となり、これは東日本大震災において発生したがれき総量の約14倍である。
この膨大な灰をどこに捨てるのか? 海に捨てることはできない。「海洋汚染防止法」における「廃棄物」に該当し、海洋への廃棄は原則禁止だからだ(例外的に認められる可能性はある)。火山灰の処分場について47都道府県に内閣府が確認したところ、仮置き場を確保している都道府県はゼロ、市町村143のうち20のみ。最終処分場の確保は都道府ではゼロ、市町村143のうち13のみ。311の教訓を生かし、火山に対する備えも早急に行う必要があるのだ。
(文=川口友万/サイエンスライター/著書『大人の怪しい実験室』)
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