顔面に巨大腫瘍を持つ3歳の少年が手術せずに日本の漢方薬を選んだ後に死亡=インドネシア

 イスラム教徒が国民の大多数を占めるインドネシアには、「断食月(ラマダン)」というものがある。6月18日から1カ月間、この時期の市民は自らの信じる宗教や神に対して、より敬虔になる。

 そんな折、ジョグジャカルタ州に住むひとりの男の子の名前がインドネシア中に知れ渡った。彼の名はアビユ・ダッファくん(3)。そのダッファくんの写真が、ここにある。

顔面に巨大腫瘍を持つ3歳の少年が手術せずに日本の漢方薬を選んだ後に死亡=インドネシアの画像1ダッファくんを報じた記事「Tribun Jogja

 注目すべきは、仰向けになっているダッファくんの左目だ。これは何だ? スポンジのような黒い塊がくっついている。これは悪性の癌腫瘍だ。

 ダッファくんの顔を正面から撮った写真もある。腫瘍はもはや顔半分を覆い、その痛々さがこちらにもよく伝わってくる。

 インドネシアでは、時折こうした重い病を抱える子どもの写真がSNSに流れ、その度に激励や寄付が相次ぐ。だが今回はそうした善意もむなしく、ダッファくんは7月3日に息を引き取った。


■手術を諦め漢方薬を購入

 ところでダッファくんの父親は彼が亡くなる直前、現地全国紙コンパスのインタビューにこのようなことを言っていた。

「私の息子は、すでに何度も入退院を繰り返しています。ですが、それが彼のトラウマになってしまったようで、医師の診察の際にも暴れるようになりました。ですから我々家族は、病院での診察よりも息子に漢方薬を飲ませる選択をしたのです」

 ダッファくんの両親は土地の権利書を質に入れ、現地価格で120万ルピア(約1万円)の日本産漢方薬を購入したという。

 しかし、ここで「なぜダッファくんに手術を受けさせなかったんだ」と考えるのはナンセンスだ。インドネシアの国民皆保険制度は、今年になってからジャワ島の大都市でようやく実施され始めた段階。農村部の市民は、未だ保険証を手にしていない。彼らは漢方薬に頼るしかないのである。

■魔都ジャカルタの光と闇

 一方で、富裕層の間では一種の「保険ブーム」が起きている。インドネシアの民間保険市場には今、日本を含めた外資企業が次々と進出している。ジャカルタ郊外の大型ショッピングモールに、日系保険会社の対面型店舗が入居したということもあるほどだ。この業界はまさに右肩上がり、特に医療保険分野は外資企業同士の激しい競争が起こっている。

 我々外国人がジャカルタを訪れた際にまず見るのは、そうした経済成長著しい光景だ。だからこそ、魔都の奥深くに潜む闇を見つけ出すことはとても難しい。その上インドネシアは今、自国通貨ルピアが米ドルに対して安くなっている。するとますます富裕層の消費が活発になり、貧困層の生活が悲惨なものになっていく。こうした現実を無視して、インドネシアを語ることはできない。

■澤田真一
フリーライター。経済情報サイト等で執筆多数。日本とインドネシアを往復する生活を送りながら、記事作成や実地調査などの仕事を請け負う。只今、インドネシア関連の執筆及び調査の依頼を受付中。https://www.facebook.com/masakazu.sawada

参照記事/「Tribun Jogja」「Kompas

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