追悼野坂昭如! 『火垂るの墓』を見た外国人1,500人以上が大絶賛した理由とは?

■アメリカ映画界の大ボスも最高評価

 アメリカでもっとも高名かつ信頼されていた映画評論界の大ボスが、ロジャー・イーバート氏(1942~2013))である。その厳しさから、彼は映画界で非常に恐れられる存在だった。イーバート氏の批評は、映画作品の完成度や芸術性のみならず、その映画の社会的価値までも考察する極めて鋭いものであり、絶大なる影響力を誇ることでも知られている。

 そんなイーバート氏が、生前に自身のサイトでアニメ映画『火垂るの墓』を批評しているが、ここでも与えられた評価は最高点だ。彼は作品に携わった人々を“詩人”と称え、私たちの想像を掻き立てて感情移入が促されるという意味において、実写映画化よりもアニメ映画化が正しいと指摘。視覚的リアリズムを追求する以上に、本質的な意味でのリアリズムを実現していると評価していた。そして、悲惨な物語であっても個々のシーンに偉大な美が込められており、「これまでに製作された“もっとも素晴らしい戦争映画”のリストに入るだろう」と締めくくっている。

 いかがだろう。戦時中の日本国内、しかも幼い兄妹の体験という野坂昭如の半自伝的小説でありながら、時代と文化の壁を軽く飛び越えて人々の心を揺り動かす『火垂るの墓』――。このような事実は、まさに『火垂るの墓』が戦争の“本質”を突いた芸術作品であり、そして同じような境遇で苦しむ子どもが、まだまだ世界にいることを示しているのではないか? この世がおしまいになる前にノーリターンとなってしまった野坂昭如だが、彼が作品に込めた願いは、死後も“世界中の”人々の心のなかで生き続ける。
(編集部)


参考:「Hotaru no haka – IMDb」、「Grave of the Fireflies – amazon.com」、「rogerebert.com」、ほか

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