“人間の言葉では表現できない”世界、心停止で死の淵へ… 一度“死んだ”看護師が垣間見たものとは

ユリの花粉を吸い込んだだけ――。それが、カナダ人看護師ジュリア・エヴァンスの人生を根底から覆す、壮絶な臨死体験の始まりだった。同僚たちが必死に彼女の命を救おうとする中、彼女の意識は、亡くなったはずの親族や友人たちが待つ穏やかな光の世界へと旅立っていた。
一輪の花が招いた死の淵
その運命の日、ジュリアは自身が勤務する病院に出勤したばかりだった。喉に「チクチクとした」違和感を覚え、彼女は原因を探り始める。「何かに触った?変なものを食べた?風邪?」そんな思考が頭をよぎる間にも、喉はどんどん締め付けられ、まるで紙やすりでこすられるような感覚に襲われた。そして、視線の先にあったナースステーションに飾られた、美しいユリの花束に気づく。
彼女はユリにアレルギーがあることを知っていたが、重度だとは思わず、いつもは避けるだけだった。しかし、その日に限ってなぜか、彼女は花束の方へ歩み寄ってしまったのだ。それが、命を脅かす大規模なアレルギー反応の引き金となった。彼女の体はみるみる青ざめていった。
アナフィラキシーショックに陥る場所として、病院は最善の場所だったかもしれない。同僚たちはすぐに行動を開始した。ある者は薬を取りに走り、ある者は夫に電話をかけ、そしてある者は彼女のそばで落ち着かせようと座っていた。
「私は空気の中で溺れているようでした」。その時、医師が駆けつけ、緊急でエピネフリン(アナフィラキシー治療薬)を注射した。しかし、予期せぬミスが事態をさらに悪化させる。注射器に充填されていた薬の濃度が、本来の10倍だったのだ。
「医師と目が合った瞬間、二人とも『間違った薬だ』と気づきました」。過剰な薬物が、ジュリアの心臓を暴走させた。
“あの世”で聞いた母の声と究極の愛
心停止に陥る寸前、看護師としての本能が働いた。「服を切り裂いて!電極パッドを今すぐ貼って!」彼女は叫び、同僚に指示を出した。極度の痛みの中、不思議なことに、亡くなった人々の最期の感覚が次々と彼女の意識に流れ込んできた。銃で自ら命を絶った親友、溺死した義母、脳動脈瘤で亡くなった実の母…。彼らの最後の苦しみが、彼女自身の痛みとして感じられた。
そして、ついに彼女の脈は完全に途絶えた。「過剰な薬で心臓が止まったのです」。体はベッドにぐったりと横たわり、肌は死の色である灰色へと変わっていった。
その瞬間、ジュリアは「全く別の場所」へ行ったという。そこは完全な暗闇の空間で、自分の体も感覚も、信じてきた全てのものがピクセルのように消え去っていく感覚だった。しかし、恐怖はすぐに安らぎに変わる。
「大丈夫よ、ハニー。ママはここにいるわ。泣かないで」。1983年に亡くなった母の声が、まるで隣に立っているかのように、はっきりと聞こえたのだ。
次の瞬間、彼女は自分の体を見下ろしていた。必死に蘇生処置をする同僚たちの姿が見える。「戻れるなら戻りたい!」と心の中で叫んだ。しかし、無情にも「また心臓が止まった」という声が聞こえる。
その時、世界は一変した。信じられないほどの光と豊かな色彩に満ちた場所に彼女はいた。「人間の言葉では、到底表現しきれません。ただ、そこにはあまりにも大きな愛がありました。それは、究極の自己愛という、最高の贈り物でした」
故郷に帰ってきたような安らかな光。先に亡くなったすべての人々が、そこにいるのを感じたという。

「私のお気に入りのブラを切ったのは誰?」
束の間の平穏と悟りの後、「ドカン!」という衝撃と共に、彼女は現実世界に引き戻された。意識が戻った時、目の前にいた長髪の研修医を、一瞬イエス・キリストと見間違えたという。そして、自分が裸にされていることに気づき、彼女が発した最初の言葉は、こうだった。
「私のお気に入りの青いブラを切ったのは誰?」
この衝撃的な体験から1年が経った日、つまり彼女にとっての“臨死体験記念日”に、ジュリアは自分が本当に“あの世”へ行き、光を見て、母を感じたのだと確信したという。この臨死体験は彼女の人生を完全に変え、他人の魂を見通すような、新たなスピリチュアルな感覚をもたらしたと彼女は語っている。
ユリの花が偶然引き起こした死と再生の物語。彼女が見た光と愛に満ちた世界は科学では説明できないかもしれない。しかし、この壮絶な体験が、彼女のその後の人生を豊かに照らしていることだけは確かな事実である。
参考:THE Mirror、ほか
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