「ソ連時代に超能力研究が盛んだったのは事実」ケロッピー前田インタビュー
身体改造ジャーナリストのケロッピー前田氏が、本名の前田亮一名義で新著となるオカルト検証本『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)を刊行。UFO、ネッシー、超能力、心霊写真、ピラミッド・パワー、ムー大陸などが、「どこから来て、どこに向かったのか?」について検証しているという。ちなみに、前田氏は昭和40年生まれ、彼自身が子供時代に体験した昭和オカルトブームの検証から始まり、その発祥をたどり、日本で“オカルト”と呼ばれているものの実態に迫ろうというのだ。もちろん、その論考はネット時代のオカルトの楽しみ方にまでおよんでいる。90年代から国内外のアンダーグラウンドカルチャーをレポートしてきた前田氏が、なぜ、いまオカルトなのか、さっそく話を聞いてみた。
●前編はコチラ
――前田さんが考える「オカルト」とは何でしょうか?
前田「これは僕個人の歴史観を反映した意見ですが、例えば、15世紀に印刷技術が登場したことは、近代の到来と関係していたと思っています。そして、キリスト教を中心とした社会で異端とされていたものが、オカルトといわれているものの起源になりました。そして、印刷メディアが登場したときに、多くの人たちが読みたいと思ったのは、キリスト教では異端とされていた古代の隠された知識が書かれたもの、つまり、エジプト時代の叡智を伝えるヘルメス文書であったり、後期プラトンの著作だったんです。
後期プラトンとは、例えば、『ティマオイス』などのことで、そこにはアトランティス大陸について書かれていたりしました。中世から近代への時代の変換期に、錬金術や占星術といわれるようなものが古代の叡智から復興して、オカルティズム(神秘学)の発祥になったんです。もちろん、17世紀にニュートンによって科学的方法が確立され、オカルトといわれるものが非科学的であるとして排除されていきます。ところが、19世紀に、電気、電波、放射線(X線)といった目にみえない力が発見されると、魂の存在を信じる心霊主義(スピリチュアリズム)が盛んになって、科学で魂の存在を証明できるんじゃないかという期待が高まりました。
そんな中で、当時の先端技術であった写真技術も心霊主義と結びついて、心霊写真が大いにもてはやされたわけです。だから、福来友吉が東大で千里眼や念写を研究していたのも、その当時、欧米でも心霊現象を科学的に研究しようという風潮があったからなんです。それがたいだい100年くらい前の話で、2つの世界大戦を挟んで、70年代、戦後日本におけるオカルトブームが到来することになります。
そういう意味で、今の日本で俗に“オカルト”と呼ばれているものは、ここ数十年でマスメディアによって作られたジャンルであって、信じるとか、信じないとか、あるとか、ないとか、そのようなオカルト議論は、非常に単純化されたものだと思うんです。だから、現代のネット時代のオカルトというものは、100年前とか、あるいは印刷技術が登場した15世紀のように、既製の考え方に対するカウンターとして、もっと自由に議論されていいと思っています。それぞれの個人がもっと自由にオカルトを楽しみ、そこから個々のイマジネーションを広げていっていい、いろいろな形のオカルトがあり得るんじゃないでしょうか。つまり、ネット時代の今、オカルトというジャンルの枠に縛られることなく、みんながオカルトの自由を謳歌していいんじゃないかといいたいんです」
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