悪夢のような「セルロイド人形製造過程」 ― ドロドロホラーの域を超えた当時の現場とは?
■死者14名、白木屋デパート火災とセルロイド
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クリスマス間近の1932年12月16日、後の東急デパート日本橋店である「日本橋白木屋デパート」にて四階玩具売り場のクリスマスツリーの電飾から出火し、火はたちまち全館にまわり、約600名の客は逃げ場を失って大騒ぎ、消防車33台、ハシゴ車3台のほか、軍隊まで出動するという大惨事が起きたのである。
火元の玩具売り場では電球を取り替えるときに散った火花がクリスマス飾りのモールに引火して燃え上がり、さらにセルロイド玩具に延焼したことが原因とされている。
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■羞恥心が死者を増加させた?
また、当時和服の女子従業員らはノーパンであったため、飛行機から屋上へロープをたらすも、恥部をさらすことを気にしたばかりに、重軽傷者130名、死亡者14名と被害が拡大してしまったのである。
その後、セルロイド商品の危険性を問題視する声が高まり、各デパートではセルロイドを使った玩具を撤去する決断を下す。そう、この白木屋デパート火災事件を機に、セルロイド人形は姿を消していくことになるのである。その後不燃性のものも出来たが高価だった為、実用には至らなかった。そして時代は第二次大戦へと突入していくことになるのだ。
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■ひっそりと生き続けるセルロイド
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戦後その危険性が指摘され、かつては日本の輸出産業としても栄えていたセルロイド人形はこうして消えていった。そして、不燃性のアセテートなど、プラスチック類の代替素材が開発されることによって、消費者たちのより安全な商品を求める声に応えるように玩具人形の素材は置き換わっていくことになる。
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しかし、今でもその独特な感触をいかして、卓球のボールや眼鏡のフレーム、小物入れなど、少量ながら生産されつづけているセルロイド。セルロイド人形が活躍したのはおよそ半世紀の間だったが、このように歴史を振り返ると非常に感慨深いものがあるものだ。
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2024.10.02 20:00心霊悪夢のような「セルロイド人形製造過程」 ― ドロドロホラーの域を超えた当時の現場とは?のページです。アナザー茂、セルロイド、日本橋白木屋などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで