我欲の欲するままに男を殺し続けた「明治の毒婦」高橋お伝の墓に参拝客が絶えない本当の理由
■本当は違う! お伝の真実
谷中霊園から離れた南千住回向院は、江戸時代に罪人たちの刑場として知られた小塚原刑場の跡地に立てられた寺院である。小塚原は大和田・鈴ヶ森刑場と並び、当時の三大刑場として知られ、江戸幕府の往時から幕末頃まで、いわゆる「大罪」を犯したとされる罪人の多くが相次いでその首を撥ねられたという、言わば「いわくつき」の場所だ。
有名どころでは、安政の大獄で捕らえられた吉田松陰や橋本左内といった志士たちもこの地で落命し、その敷地内に土を盛るという、あまりに無造作な形で埋葬されたという。また、『解体新書』の表紙を象ったレリーフが敷地内に飾られていることからもわかるように、当時、欧米諸国に倣う形で近代的な医学の研究を志していた杉田玄白ら医師たちが、彼ら罪人たちの遺体を使って、解剖実習を行った場所としても有名である。実はそうした同院の片隅に、高橋お伝の「本当の墓」が佇んでいるのだ。
回向院の片隅にあるお伝の墓は、旗本渡り用人の出で、江戸後期の無頼漢・片岡直次郎、歌舞伎などで知られる江戸期の侠客・腕の喜三郎、怪盗として有名な義賊・鼠小僧次郎吉らの墓と共に、まるでパーティでも組むかのように並び立つ。
■お伝、腕の喜三郎、鼠小僧…… 終わることのない旅の続き
なぜここに、お伝の墓があるのかは知る由もないが、あえてRPG風に言えば、その姿は夢を信じて旅立ち、志半ばで冒険の書を奪われることとなってしまった、かつての勇者・戦士・盗賊・魔法使いといったところか。しかしこれらの墓パーティを見る限り、やはり回復系のキャラが含まれていないという点が致命的であったように思われてならない。
時代が前後するとはいえ、願わくば同院の僧にパーティへの加入を促して、その終わることのない旅の続きを、いつまでも紡ぎ続けて頂きたいところだ。なお、これらの墓で特筆べき点としては、腕の喜三郎の墓がやはり印象深い。
喜三郎はその全盛期、喧嘩の最中に腕を激しく斬りつけられて負傷したが、その後、負傷した腕が醜いと感じた彼は、子分に命じて腕を鋸で切り落とすという、俄かに信じがたい処置を行ったという逸話が残っている。そのため、そうしたエピソードにちなむ形で、彼の墓は、ロシア革命のプロパガンダポスターのような腕をモチーフとした極めて特殊な墓となっているのだ。そうした豪放磊落な生き様で短い生涯を終えた喜三郎や、盗んだ金を庶民に撒いていたという鼠小僧などと肩を並べる形でお伝が葬られている点も、実に興味深いところである。
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