■南相馬で聞いたTSUNAMI
日が暮れて18時すぎ宿に着く。驚いたことに、国道沿いにぽつんと建っている旅館はちょうど福島第一原発から20キロの境目だった。宿と眼の鼻の先に立ち入り禁止制限の看板と点滅灯がチカチカしている。自分の部屋は安全ですぐとなりは立ち入り禁止区域というのはなんだか腑に落ちない話であるが、コンパスで書いたような区域はそういうことになるのだろう。客は私たちのほか、東電関係者と思われる方や作業員の方のみだった。
夜、Aさんの提案で地元の飲み屋に行った。内心東京から物見遊山で来た自分に怒りをぶつけられても仕方ないと思いつつ、スナックのような所に入った。娯楽を失った人々の憩いの場となっており、満席状態。地元の人も別段「そうなんだ」程度のリアクションに過ぎず内心ほっとした。しかしそんななか事件は起きた。誰が言い始めたのか、カラオケ大会が始まって一曲ずつマイクを回している。自分は部外者だからスルーされるかと思いきや、ほいさとマイクを渡された。私の脳裏には津波のこともあって、「流れる」「水」等に関係する曲を選んではいけないと、セクシャルバイオレットNO1を歌って隣の人に渡したら、驚いたことにサザンの「TSUNAMI」を歌うではないか。
「ははは、そんなこと気にしていたらやってられないよ。復興?そんなの無理だよ。誰もそんなことに期待なんかしていないよ」、東京との温度差を感じた夜だった。