「ムー」編集長・三上丈晴の【ムー的書籍探訪】 第18回

高尾山古墳は邪馬台国に敵対した狗奴国の女王・卑弥弓呼の墓だった?邪馬台国畿内説は証明されるのか?

――「世界の謎と不思議に挑戦する」をコンセプトに掲げ、UFOからUMA、都市伝説、陰謀論……と、さまざまな不思議ジャンルの話題で、読者に驚きと感動を与えてきた学研「ムー」。ここでは、そんな「ムー」を操る三上丈晴編集長が厳選した“マストブック”を紹介しながら、世の中の不思議に深く触れていただきたい。

【Tocana Reader’s MustBook No.18】
高尾山古墳は邪馬台国に敵対した狗奴国の女王・卑弥弓呼の墓だった?邪馬台国畿内説は証明されるのか?の画像1『失われた卑弥呼の金印「親魏倭王」の謎』(ムー・スーパーミステリー・ブックス)

 大和朝廷が開かれる以前、この日本には邪馬台国という“クニ”があったとされる。中国の史書『魏志倭人伝』によれば、紀元3世紀ごろ、当時、倭国と呼ばれた日本を統治していたのは卑弥呼という名の女王だったという。

 邪馬台国の所在地をめぐっては畿内説と九州説をはじめ、四国説や沖縄説、さらには海外のスマトラ説、エジプト説などが知られているが、今、大きな転換期を迎えようとしている。考古学的な発見により、ほぼ畿内説で固まりつつあるのだ。最近もまた、これを裏づける発見があった。

 『魏志倭人伝』によると、倭国は大きくふたつに分かれていた。卑弥呼に従うクニと敵対する“卑弥弓呼(ひみここ)”を支持するクニがあったのだ。

 後者を束ねていたのは狗奴国だった。狗奴国は邪馬台国の南にあったとされるため、方位が正しいとする九州説なら鹿児島あたりに比定され、距離が正しいとする畿内説であれば、東海地方から関東地方にあったと考えられてきた。

 実は、この卑弥弓呼のものと思われる墓が見つかったのだ。場所は静岡の沼津市で、高尾山遺跡として知られている。問題の古墳は前方後方墳で、長は約62メートルと、当時としては東日本で最大級だ。築造は3世紀前半と見られており、卑弥呼の時代と重なる。規模から考えて、東海地方を治めていた大王の墓だと推測されている。畿内説からすれば、まさしく卑弥弓呼の墓の可能性が高い。

 きわめて重要な遺跡が注目されるきっかけは、なんとも皮肉なことに、人域的な破壊の危機に直面したからだ。地元の要請によって計画した国道建設のルートに高尾山古墳が重なってしまったのだ。道路を作るためには、古墳を一度破壊して、移設する必要が出てきた。これに対して、地元の有識者が協会を立ち上げ、移設反対を強く訴えた結果、幸いにして道路のルートを変更することが議会で決定され、古墳は保存されることとなった。

 だが、かなり工事は進んでおり、すでに古墳の上にあった神社は取り壊され、古墳はむき出しの状態。調査発掘も行われていたが、昔の面影はない。聞くところによれば、この工事に関連して、ふたりの方が亡くなっており、地元では祟りではないかとも噂されている

 いずれにせよ、全国的に注目されることとなった高尾山古墳だが、改めて被葬者が卑弥弓呼だったと確認されることとなれば、邪馬台国論争は一気に加速、畿内説で、ほぼ決まったと認識されることになるだろう。

 だが、もしそうなった場合、最後に問題となるのは方位である。 『魏志倭人伝』は狗奴国を邪馬台国の南に位置づける。邪馬台国を畿内とすれば、東海地方は東。約90度の違いがある。これは確定している九州の対馬、壱岐、松浦から見た邪馬台国や投馬国などの方位も同様で、畿内説が抱える大きな課題のひとつだ。方位の読み替えに関しては、太陽運行の季節変化などがあがられているが、定説にはいたっていない。

 これに関して、もっとも大胆な仮説を提示しているのがサイエンス・エンターテイナーの飛鳥昭雄氏だ。飛鳥説によれば、 『魏志倭人伝』の方位は正しく、かつ邪馬台国は畿内にあった。間違っているのは、昔の地形と今の地形が同じだという認識にあるとし、かつて日本列島は約90度、時計回りに回転していたと考える。逆転列島倭地理観に立てば、邪馬台国は畿内であり、狗奴国は東海地方になると主張する。

 高速プレートテクトニクスという激変論に立った邪馬台国=畿内説は、他に類を見ないほど突拍子もない説にも思えるが、これを支持する人々もいる。日本の歴史を裏から支えてきた秘密組織、八咫烏である。彼らは飛鳥説を認めながら、そのしるしとして、なんと卑弥呼が魏の皇帝から送られた「親魏倭王」の金印の写真を見せられたという。

 詳しくは本書に譲るが、高尾山古墳が卑弥弓呼の墓として注目される今、いよいよ邪馬台国論争も大詰めを迎えつつあるのかもしれない。


●三上丈晴(みかみ・たけはる)
1968年、青森県生まれ。学研「ムー」の5代目編集長。筑波大学を卒業後、学習研究社(現・学研)に入社。「歴史群像」編集部を経て、入社1年目より「ムー」編集部に所属。

●「ムー」
出版社:学研パブリッシング/発売日:毎月9日/税込価格:670〜690円/発行部数:7万部/概要:「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」として、UFOや超能力、UMA、怪奇現象、オーパーツ、陰謀論など、オカルト全般を追求する情報誌。
公式HP<http://gakken-publishing.jp/mu/

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