借金、虐待、DV…国が見捨てた「非エリート風俗嬢」の実態! 坂爪真吾インタビュー
――最近の性風俗に関するルポルタージュなどでは、精神障がいや知的障がいを患っている女性と貧困について語られることが多いですね。前回は、そういった生きるために性風俗で働く女性たち、坂爪さんが取材された激安風俗店や地雷専門店「デッドボール」で働く女性たちの様子を聞きました。
一方で、坂爪さんは同書で他にも激安デリヘルではない風俗店、たとえば妊娠中の「妊婦ママ」や、母乳の出る産後間もない「母乳ママ」とのプレイが楽しめるという専門店も取材されています。その店では少ない時間でもかなり稼げるようですし、託児所まで設置されていてずいぶん環境は良いですね。
坂爪 取材したその店は幼い子どもたちのためにベビーシッターを3人雇い、女性が接客すると客1名につき500円を天引きされるだけで利用できる託児所があります。だけれども、そのお店で働ける女性というのは、容姿からして風俗の世界ではエリートで、デッドボールで働く女性が入店するのは難しいのが実情です。つまり、同じ性風俗のなかでも、ある程度好待遇なエリートとそうでない女性に乖離があります。この本を読んだ風俗で働く女性が、自分のお店はもっと平和で、貧困なんて聞いたことがないと感想を語ってくれたほどです。
――前回も聞いたのですが、なぜサンキューグループなどの激安風俗店で働くのでしょうか? 性風俗ではないアルバイトや、知的障害を抱えているならばそうした人を積極的に雇う場所で働けば良いじゃないかという意見をよく耳にします。
坂爪 アルバイトやパートだと、場合によっては生活保護費以下のワーキングプアに陥ってしまうんです。
また、各自治体には障害者の就労支援があります、たとえば障害者がある人たちのための作業所で働くと、時給が良くても最低賃金ギリギリと、とにかく安いのです。それでは生活が成り立たない。彼女たちの多くが、知的障害者や精神疾患、借金などのハンディキャップを抱えています。ですからたとえば週に5日、1日数時間定期的に働くという仕事ができないんです。体の調子の良い時に、できるだけ短時間で高収入の仕事となるとどうしても風俗になってしまう。
――なるほど。たとえば、性風俗で働く女性にはシングルマザーが多いとも聞きますが、20~64歳までの単身女性の3人に1人が年収114万円未満というデータもあります。
風俗店側はどのような対策を考えているのでしょうか?
坂爪 彼女たちに風俗できちんと稼いでもらおうとすると、どうしてもリスクの高い方法を取らざるを得ないんです。たとえば、違法である本番行為や、衛生面で問題のあるコンドームなしでのサービス、質の悪い客でもサービスを行わないと稼げない。また、デッドボールのように地雷専門店という一見差別的な形を取らざるを得なくなるんです。これを「デッドボールのジレンマ」と名づけました。安全な環境で高い賃金を支払いたいと思ってもなかなかそうはいかないんです。それは経営者が女性たちを搾取しているとかそういったことではないんですよ。
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