築地市場で売られた原爆マグロ? 毒魚「バラハタ」どころではない築地のヤバい日常

●廃棄食品を拾って売る

 不法投棄などを監視するのはさておき、厄介なのは廃棄されたものを拾っていくケースである。

 廃棄されるものの中には、傷もので商品にならないというだけで十分食べられるものや、マグロ屋が商品にしない油ののったカマの部分など、スーパーに並ぶ「み切り品」などと比較にならないほど鮮度のいいものが多々ある。個人的に持っていく分ならまだしも、ここで名前は出せないが、それを店頭に並べる店もあるのだ。そりゃ廃棄されたとはいえ、競り落としたばかりのもので鮮度が良いのは分かるが、消費者として見れば気持ちのいいものではない。

 これもまた、エコという言葉が流行る前から当たり前のように行われてきた築地文化なのだろうか。ちなみに築地で働く人はまかないに切り身などを食べているのだろうと思ってる方もいるだろうが、店の商品に手を出すことはほとんど無い。仕出し弁当か、場内にある売店で売っているカップラーメン等が主だ。魚を捌きながら、「たまには寿司でも食いてえなぁ」なんていうボヤキを聞くとくすりと笑ってしまう。

■ビキニ原爆マグロの本当の行方

 第二次世界大戦後の1954年3月1日、かの遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」が、南太平洋ビキニ環礁でアメリカの水爆実験により降り注いだ「死の灰」を浴びた。乗組員は被爆、築地市場には「第五福竜丸」が漁獲したマグロ3本と大量のサメが輸送されてしまった。原爆の記憶が生々しい時代、焼津からの急報で競りは中断され科学研究所の調査で高濃度の汚染がガイガーカウンターにて検出された

 ようやく食の安全が叫ばれだした時代、原爆マグロは食の安全を司る築地市場にとって頭の痛い問題であった。当時を知る人の話では、「原爆マグロは今の正門横辺りに全部埋められた」、という。現在だったらもっと慎重な廃棄が施されたであろうが、当時は穴を掘って埋めればいいという感じだったようだ。

 しかし話は続いた。

確かに埋められたんだが、次の日の朝にはそっくり掘り起こされていたんだ。どこの店だか知らないけど、勝手に売りさばいてしまったんじゃないかな。なんせ仕入れがタダだから相当儲かったんじゃないかねえ

 にわかに信じがたいが、もう築地市場の地中には原爆まぐろの骨の跡すらも残っていないというのだ。ちょっとゾッとする話であるが、今回の「バラハタ」騒動に通ずるものを感じる。

 築地は無法地帯とはいいながら、独自のルールによって培われてきたやり方によって1935年の開場以来、日本のみならず世界中に食を提供してきた。その独特の築地文化が無くなってしまうと思うと少し寂しいものだ。移転まであと半年わずか。すでに場外市場は新たな施設が建設されどんどん街の様子も変わりつつある。豊洲に移転する前にその歴史に触れてみてはいかがであろうか。

(アナザー茂

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