まさに人間ミシン！ Amazonもビックリの大発明「ロッキング・ニット」ーローテクが教える無意味の美学

2016.04.20 16:00

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　映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」冒頭に登場する、いくつものアナログな仕掛け満載の自動朝食マシーンやピタゴラスイッチ……。一見すると無駄のようでありながらも、その洗練された仕組みは見るものを魅了して止まない。テクノロジーが飛躍的に進歩するなか、ローテク技術界の新たな発明もまた我々に夢を与えてくれるものだ。

　スイスのデザイナーチームが開発した、画期的なローテク技術が詰め込まれたロッキングチェアもまさにそんな一品だ。いくらハイテク技術が進化しても、日本が誇る伝統工芸のようにローテクに学ぶべきものはまだまだ多い。

■まさに人間ミシン？ Amazonもびっくりのロッキング・ニット

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画像は「ECAL」より

　ロッキングチェアというと、白ひげをたくわえた老人が庭に面したテラスでパイプをくゆらせながら、ゆらゆらと座っているというイメージが強い。しかし、スイスの芸術学校「ECAL」に通う学生ダミアン・ルディとコリン・ペレックスが卒業制作の一環として開発したこの「ロッキング・ニット（Rocking-Knit）」は、前後の揺れを使って自動的にニット帽を編んでしまうという驚きの代物なのである。

「ロッキング・ニット」があれば、もう新しいニット帽が欲しいからといってわざわざ出かける必要はない。ただテレビを見ながら、揺れていればよいのだ。

　いまやAmazonのプライムNOWを使えば欲しいものが1時間で手に入る時代だ。しかしそれでも、ローテクの持つ楽しさまでは手に入らないだろう。この「ロッキング・ニット」は、リラックスのひと時を楽しんでいる間にロッキングチェアの前後運動が歯車によって変換され、頭上に取り付けられた編み機の動力源となるのだ。動力源は座っている人、電気はまったく使用しない。必要なのは、少しの時間と毛糸だけである。

　あなたなら、Amazonの発送と、この偉大な発想のどちらをとるであろうか？私なら断然後者だ。

■ローテクが教えてくれるもの

「ECAL」は、西スイス大学が母体となっている芸術学校。プロダクトデザインや工業デザインの博士課程において、完成された既存のマテリアルを学ばせるだけでなく、実際に学生自ら独自のアイデアを活かした作品を製作させている。そこで誕生するものは「ロッキング・ニット」をはじめ、自動ポップコーンマシーンなど実にユニークなものばかりだ。

「このワークショップにおいては、自動生産がテーマになっています。近年あらゆる技術が向上し、生産過程よりも生産効率やコストの削減など、結果ばかりが重要視されるようになっているのが現状です。しかし、その生産過程をいかにバランスよく考えるかというのが一番重要なことなのです」と、生徒を指導するクリス・カベル博士は語る。

　ポップコーンも、食べるだけであればコンビニで買えばいい。しかし、この自動ポップコーンマシーンには生産過程を“見て”“楽しめる”ような工夫が仕込まれている。

「このマシーンでは、トウモロコシの粒がどうはじけるのか見えるようになっています。そこにある楽しみは、一斉にはじける機械では排除されてしまうものです。もちろん効率性も考えなくてはなりませんが、いかにこれらを両立させるかというのが工業デザインのポイントなのです」と、製作者のピエール・ブーヴィエは「ECAL」のサイトにて語っている。