『BRIGHT MOMENTS』(マルクマ本店)。写真展情報は最終ページに掲載
写真展「青について」が5月8日まで開催中の写真家・熊谷聖司の写真集『BRIGHT MOMENTS』は不思議な深みと広がりを感じさせる写真集だ。イメージを構成する主な要素は岩と空と水、そして女性の肌。そのどれもが青のベールで包まれたようにぼんやりと写し出されている。そこから感じ取れるのは世界の始まりだ。
写真集は、岩に囲まれた水のなかに立つ女性の足を撮ったイメージから始まる。岩場、水面に浮かぶ女性の肉体、波、雲間から射す陽の光。個々の要素のどれかにフォーカスを当てるのではなく、写真全体で熊谷が捕らえたイメージを投げかける。
『BRIGHT MOMENTS』(マルクマ本店)
「最初に『岩』と『空』と『水』と『肌』っていうのがベースにあった。ある意味わかりやすい元素に近い要素。地球が誕生して、いまとなっては人工物が世界中を覆い尽くしている。でも、100パーセントではなくて、地球が誕生したままの無垢な場所もある。そのイメージを写真のなかに抽出した。だから、場所を特定する記号的なものはなにも入れていない。『岩』と『空』と『水』の3つは、どこの国で撮っても変わらない」(熊谷)
この世界に人類が誕生した時、周囲に存在したのはきっとこれら3つの要素だったに違いない。そこに人の肌が入ることで人間の世界が始まり、現在も変わることなく続いている。『BRIGHT MOMENTS』を眺めていると、そんな、太古から今に至る人類の物語が思い起こされてくる。