TPP開始で猛毒“殺人ヒアリ”が日本侵入の危機? 生態学者・五箇公一が語る「危険な外来種と昆虫宇宙起源説の真相」
国立環境研究所の外来生物研究プロジェクト・リーダーである五箇公一(ごかこういち)先生に、地球環境保護の基礎となる大きなテーマ“生物多様性”を全6回にわたり解説してもらうシリーズ第2回。今回は、「昆虫宇宙起源説」や「危険な外来種」について、ズバリ聞いてみた。
【第1回 生物多様性について】
■昆虫宇宙起源説についての考察
——まずは単純な質問ですが、陸と海ではどちらの方が生物は多いんですか?
五箇 生物量(個体数・重量)は海のほうが大きくて、種数は陸の方が多いと推定されています。特に陸域の動物群の種多様性の大半は昆虫が占めると考えられています。しかし、見つかっていないだけで、生物の種数は海の方が多いという意見もあります。陸だと世界最高峰のエベレストで8000メートルですが、マリアナ海溝はわかっているだけで、10900メートルより深く測りきれない。人間の手が届かないのでわからないことだらけです。
——オカルト界隈には昆虫宇宙起源説(昆虫は元々地球上の生物ではなくエイリアンという説)というものがありまして、その理由として、生命の起源といわれている海よりも地上の昆虫の数の方が多いといという説があるのですが。
五箇 それは節足動物が陸に上がってから進化しているからですよ。
——なるほど。昆虫も元々は海の生物であり、宇宙からきたものではないと。では、トビムシが3億7000万年前に誕生してから、7000万年間他の生物が出現しなかったのに突然昆虫の種類が増えたというミッシングリンクはどうなっているんでしょう。
五箇 ひとつ、昆虫は化石が残りません。ミッシングリンクというより、その年代の地層の形成の仕方で化石がごっそり出てこない時代はあるんです。現在ではDNAの分析によって、陸上に進出したトビムシの仲間から昆虫が進化したと考えられていますが、過去の種数のさかのぼりは特に昆虫のような化石の残らないものは相当に難しいです。
——昆虫宇宙起源説は否定されますか。
五箇 昆虫は海の生き物たちから進化してきた陸上生物の系統に含まれていて、根拠にDNAがある。昆虫の進化を端的にいうと、海のプランクトンが外骨格を持ったことが起源になり、外甲殻を持った陸生のムカデ、サソリ、クモ、そして昆虫が派生する。という系図が作られるのです。でも、昆虫だけが宇宙から来たとしたら、このDNAを使用した系統樹が成り立たなくなります。せめて昆虫だけ、全く違うDNAを持っているなど事実があればいいのですが、現状「昆虫宇宙起源説」は科学的な裏付けが取れていないといわざるを得ない。
——宇宙空間にも耐えられる最強生物・クマムシの故郷も宇宙ではない、と。
五箇 クマムシもDNAを持っていますから、進化年代も計算できちゃうんです。最強生物だからといって宇宙生物ではありません(笑)。体の構造が単純であれば、宇宙空間に出ても、すぐには死なないですよ。
——残念です。
五箇 でも、夢がない話ではなく、地球の生き物以外に外部から入って来たものがないとはいい切れない。我々が知りうる現存する生き物はDNAという遺伝子情報が共通の物質で作られています。さらに塩基配列の並び方から進化が計算できて、進化のプロセスを見ることができます。今のところ「DNAが変だ」というキングギドラやギャオスのような「宇宙怪獣」は見つかっていません。ただし、いないとは限らない。
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2024.10.02 20:00心霊TPP開始で猛毒“殺人ヒアリ”が日本侵入の危機? 生態学者・五箇公一が語る「危険な外来種と昆虫宇宙起源説の真相」のページです。TPP、松本祐貴、五箇公一、ヒアリ、昆虫宇宙起源説などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで