タイのびっくり人間はレベルが違う! オッサンが唐揚げを“素手で”揚げるようになった驚愕の理由

 ある日、不運にも頭上の木の枝が折れて屋台の油に飛び込んできてしまった(その後の経緯を考えると、結果的には幸運だったのかもしれないが)。そして、煮えたぎる油が大量にカンさんの顔に降り注いだという。驚いたカンさんだが、彼はなぜか病院には行かなかった。大した痛みも感じないし、皮膚は見た目にも問題なかったのだ。

タイのびっくり人間はレベルが違う! オッサンが唐揚げを素手で揚げるようになった驚愕の理由の画像3手はまったく火傷の跡がない。

 この経験を受け、カンさんは「よし」と覚悟のうえで熱々の油に手を突っ込んでみたという。すると、やはり痛みはなく、自らの特異体質を確信することに。恐らく一種の温痛覚障害の可能性もあるが、通院しなかったため本当ところはわからない。いずれにしてもこの店主は、体質をうまく利用してテレビに出演することに成功する。そして、タイ全土で有名になるとともにアメリカのテレビショーにまで呼ばれるなど、唐揚げで大成功したのだ。

タイのびっくり人間はレベルが違う! オッサンが唐揚げを素手で揚げるようになった驚愕の理由の画像4いくら無痛でも、長く油に手を入れると肉が焼けてしまうので長く掴めないのは仕方ないが、目の当りにすると本当にすごい。


■パフォーマンスで売れているわけではない

 肝心の唐揚げの味だが、そもそもこの特異体質に気づく前から確立されていたそうだ。競合店とは一線を画すレベルで、普通はタイ式の唐揚げに併用するソースもいらないほどおいしい。開店から閉店まで客足が絶えないところを見れば、その確かな味も理解できるだろう。現在では、マスコミに頼まれない限り素手で唐揚げをすくい上げることはないが、そもそもカンさんが技を披露しても地元住民は誰ひとりとして見向きもしない。もう完全に飽きられているし、それ以上に、人々は唐揚げがおいしいから買いに来るのだ。カンさんは宣伝の方向を間違えているような気もするが、それがまたタイ人らしくて微笑ましい。

 実演を目の当たりにしたが、カンさんも決して熱々のからあげを「バシッ」と掴むことはない。少し掌に乗せる感じなのが、またトリックのようでかわいらしい。ここで「本当は熱いんじゃないですか」などと質問を投げかけるのは野暮中の野暮。これほどおいしい唐揚げの宣伝が、なぜこんな技だったのか。そんなカンさんの謎深き思考回路についてじっくり思いを巡らすほうが面白いのだ。
(文=高田胤臣)

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